「ストレス=悪」の誤解が招く不調のスパイラル5つ なんでも「ストレスのせい」にしてはいけない

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●本質的な問題解決が遅れる

体調不良の原因をストレスに限定することで、問題の本質を見抜けないため、根本的な解決策を見つけることができず、いつまでも状況が解決できなかったり、同じ問題を繰り返したりする可能性がある。

このように、なんでもストレスのせいにし、ストレスさえなくなれば……と考えることで、さまざまな別の問題が生じる懸念があるのだ。

「ストレスを感じている」人が、病気になる?

米国で、約3万人の成人の動向を追跡調査した興味深い研究がある。

1998年に、「過去1年間にどの程度のストレスを感じたか」「ストレスは健康に悪いと考えているか」とインタビューしたデータを、8年後の2006年までの全国死亡率データとつき合わせて分析したものだ。

『なぜストレスフルな人がいつまでも若いのか: ストレスを使いこなす!6つの金のメソッド』(Gakken)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

これによると、「ストレスが健康に悪い」と考えていた人たちは、他のグループに比べて死亡リスクが高かったのだ。

一方で、高いストレスを感じていたものの、ストレスを「健康の一部や成長の機会」とポジティブに考えている人たちには、死亡リスクの増加は見られなかったという。

この結果から、ストレスそのものよりも、ストレスを「悪いもの」と捉えることが、健康に悪影響を与えてしまう可能性がみてとれる。

ストレスを心配することが、逆にストレスになり、病気を引き起こし寿命を縮めているかもしれないというのでは笑えない。注意しすぎることで、かえって悪影響があるかもしれない。

ストレスを過度に恐れてしまうと、受け入れられるストレスの量が少なくなるのではないだろうか。逆に、ストレスをあまり怖がらないで、むしろ「ウェルカム!(ようこそ!)」という態度をとっていたら、それなりに大きなストレスでも受け入れられる耐性ができると思う。

このことが「ストレス耐性」といわれるものの正体かもしれない。ストレスをやみくもに避けようとするのではなく、ストレスがパフォーマンスを向上させたり、適応力を高めたりするという、ポジティブな面に目を向けることが大切だといえよう。

伊藤 裕 慶應義塾大学名誉教授、同大学予防医療センター特任教授、医学博士

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いとう ひろし / Hiroshi Itoh

京都市生まれ。1983年京都大学医学部卒業、米国ハーバード大学、スタンフォード大学医学部にて博士研究員。京都大学医学部助教授を経て、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授。2023年より現職。世界で初めて、臓器同士がつながりあって疾患が広がる「メタボリックドミノ」を唱えた。高峰譲吉賞、日本高血圧学会栄誉賞など受賞多数。元日本内分泌学会代表理事、日本高血圧学会理事長。著書に、『なんでもホルモン』『幸福寿命』(朝日新書)、『「超・長寿」の秘密』『いい肥満、悪い肥満』(以上、祥伝社新書)、『からだに、ありがとう 1億人のための健康学講座 (PHPサイエンス・ワールド新書)』『ほっこり』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。NHKスペシャルなどメディア出演多数。

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