軽い気持ちで「チケット転売」推し活に潜むリスク 懲役刑や損害賠償を求められる可能性もある
同法で定められている罰則は、「1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金」。だが、「悪質な場合は、他の罪状も加算されます」と徳永弁護士。
例えば、昨年5月に札幌で逮捕された当時28歳と27歳の女性は、いずれも100を超える名義を所持して転売を繰り返していた。
「そもそもファンクラブの規約上は、一人につき一つのアカウントしか登録できないのであるから、本件は、規約を遵守する者がチケットに当選する確率を著しく減少させる悪質な犯行であり、犯情は芳しくない」として、他人の会員情報を使って不正に電子チケットの購入権利を得ていた電子計算機使用詐欺などの罪にも問われ、それぞれ懲役2年と2年6カ月(いずれも執行猶予3年)、罰金50万円を言い渡されている。
たとえ罰金刑のみで済んだとしても、前科犯となる。ましてや逮捕や裁判となれば氏名や居住地も公開されるため、軽い気持ちで行った転売が、一生ついてまわることになりかねない。
また、「仮に刑事で不正転売の罪に問われなかったとしても、営業権侵害として、民事で損害賠償請求を受けるリスクはある」と徳永弁護士は指摘する。
今回も、開示請求によって転売者の身元が明らかになれば、「申し立てや裁判にかかった費用なども賠償対象となりうるかと思います」。
購入者にもリスクがある
ちなみに、違法出品のチケットと知りながら売買を仲介する業者には、非はないのだろうか?
「仲介サイトの建前上は、あくまでもチケットを販売する場を提供しているだけ、ということになる。かなりグレーではありますが、違法行為を禁じる告知は行っているので、いきなり罪に問われる可能性は低い」と徳永弁護士。
「とはいえ、興行主から訴訟を受けることはあるでしょうね」
2017年には最大手だった「チケットキャンプ」が突然終了を決定している。
近年はSNSでの高額転売も横行しており、仲介サイトだけがその温床というわけではないものの、今回の開示請求にまつわる裁判が、新たな風穴となるかもしれない。