NHK大河ドラマ『べらぼう』で主役となった、蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)。重三郎は20代前半で吉原大門前に書店を開業し、書籍の販売と出版をスタート。浮世絵師を巧みにプロデュースし、「江戸のメディア王」として名を馳せた。一体、どんな人物だったのか。また、重三郎が活躍したのがどのような時代で、どんな歴史人物と接点があったのかも気になるところだ。江戸時代中期に花開いた町民文化とともに、この連載で解説を行っていきたい。連載第3回は書店経営者として成功を収めた、蔦屋重三郎のビジネスの才覚について解説する。
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百貨店王と鉄鋼王は同じ教訓を伝えている
年の瀬は1月に発刊される『逆境に打ち勝った社長100の言葉』という本の最終チェックをしていた。ひたすら経営者の言葉に触れていると、「行動を起こすタイミングを逃すな」というメッセージが目立つことに気づく。
例えば、アメリカで初めてデパートメントストアを開業させた百貨店経営者ジョン・ワナメーカーは、返品制度や価格制度の統一という画期的な手法を導入した。今ではどちらも当たり前になっていることだが、顧客サービスを何よりも重視するのが、彼の経営スタイルだった。
アイデアマンだったワナメーカーが残したのが、次の言葉である。
「仕事で成功する千載一遇のチャンスというものは、誰にでも訪れる。問題は、それにいかに敏感になれるかだ」
幼少の頃から貧しかったワナメーカーは、学校にも行かず、レンガ工の父を手伝ったり、弁護士事務所や印刷会社で働くなどして、家計を支えた。
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