今まで2年不運が続いたためか、この年の「クジ」は対象を描くには最高の、「最前列」。そこで初めて1次試験を突破します。2次試験も力を出し切り、見事4浪で東京藝術大学美術学部デザイン科デザイン専攻に合格しました。
「この年はもう、合格は難しいと思っていたこともあり、1次試験の合格発表の日も、2次試験の前日もアルバイトを入れていて、普段の生活リズムを崩さずに受験をすることに決めていました。実際に合格したときは作品の出来がとてもよかったとはいえ、驚きましたね。環境を変えたことで、心持ちや描く絵が変わったのがとても大きかったです」
社会人になっても浪人の日々が生きている
東京藝大卒業後の青野さんは、新卒で入った大手飲料メーカーのデザイン担当として4年間勤務したあと、美術予備校の講師を経て、造形作家として活動しています。
浪人してよかったことを聞くと「実力をつけたことで苦労せずにやりたいことができるようになった」、浪人して変わったことについては、「自分のことがよくわかるようになった」と答えてくれました。
「東京藝大は変わった環境でした。授業で課題が出されたあとはほぼ丸投げで、『好きなことをやってください』といった環境なのですが、浪人していなかったら何をしていいかわからなかったと思います。
それでも、私は浪人のときに考えながら絵を描いていた習慣のおかげで、大学に入ってからは苦労せずにやりたいことができるようになっていました。浪人生活の中で大人になったので、自分のことがよくわかるようになり、それを作品に表現できるようになったのだと思います。
受験生だけでなく、社会人になってからも、自己理解ができているかどうかは(自身の)行動に出るので、人生に対する造詣が深くなった浪人の日々は、私にとって大きな経験になったと思います」
東京藝大に入る目標をかなえ、立派な大手企業のサラリーマンを経験し、現在も自分の表現を突き詰めている青野さんは、浪人によって視野の広さを手に入れたのだと思いました。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら