再び「金融緩和策」の実施が近づいている? 雇用は増えても、賃金上昇が緩慢な日本経済

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とすると、日本でも労働市場の需給は改善しているが、「米国ほどの状況には至っていない」ということだろう。

日本では、雇用増が進む一方で、1年くらい前から人手不足が深刻であると言われた。ただ日本の賃金上昇率が緩慢なままにとどまっている状況をみると、需給改善が進んだとは言い難いのではないか。

かつてのコラム「『人手不足』は本当に深刻な状況なのか?」でも指摘したが、実際には長年にわたり「人員過剰」の状況に多くの企業が慣れていたため、人手不足感が強く感じられている一因なのかもしれない。

企業はデフレの再来を恐れている?

人手不足が幅広く生じているのであれば、人員を拡充することを優先する企業行動が広がってもおかしくない。

雇用回復が賃金上昇に波及することに時間がかかっていることには、労働市場改善がまだ道半ば、言い換えれば「さらなる改善余地」が幅広く残っている可能性を示している。

あるいは、デフレが再び訪れるのではないかという懸念が払しょくされないから、労働力人口が減少するのは誰に目にも明らかなのに、人員確保に躊躇しているのかもしれない。

日本では失業率が3.5%以下に改善が難しいとの見方もあるが、さらなる改善余地が大きいという意味では、1990年代半ば以前の2%台に失業率が低下する余地があるのではないか。

こうした筆者の見方が正しいのであれば、仮に今後景気下振れリスクが高まれば、金融緩和強化などで総需要の後押しが必要になることを意味する。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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