例えば、4-6月に個人消費がマイナスになったが、これは制度変更による影響が少なくないと考えられる。つまり、4月からの年金給付が、マクロスライド方式導入などで1.4%ポイント削減されたことで、高齢者世帯の消費行動は影響を受けた。これが個人消費の抑制要因になったとみられる。
また、消費増税による実質可処分所得の目減りも、消費の復調を抑制している可能性もあるだろう。
消費停滞が一時的であれば良いのだが、それ以外に「好循環の滞り」という点で、毎月勤労統計ベースの今年の夏季ボーナスが冴えなかったことが、個人消費停滞に影響した可能性がある。実際にはこの調査は、事前のボーナス調査や他の統計と比べると、サンプル変更というテクニカルな要因で過小評価されている可能性が高く、正確な判断は正直難しい。
なぜ雇用改善でも賃金上昇は小幅にとどまっているのか
ただ、それでも、賃金上昇は、先に挙げた個人消費に対する逆風を跳ね返すほどには期待したほど上昇していない。そのことが、個人消費停滞の一因になっている可能性を完全には否定しがたくなっている。
アベノミクス発動後の2013年以降、雇用者数は順調に伸びている。その数は、年間あたり45万人(約+0.8%)になる。ただ当初2年間の雇用増加は非正規社員を中心に起きていたため、それが賃金を抑制していた。2015年年初から正社員が増え始め、雇用の質にも変化がみられているが、賃金を大きく押し上げるほど、雇用の質が改善するには至っていないのかもしれない。
日本の賃金の伸びが依然緩慢であることについては、さまざまな見方がある。「IT化の進展で労働市場の構造が大きく変化している」、あるいは「グローバル化が賃金を抑制している」など、さまざまな議論がある。
筆者の見方はシンプルである。2008年のリーマンショック以降、雇用が増え続け労働市場の需給改善が進んだ米国においては、賃金上昇率はここ数年2%前後で伸び続けている。人口が増え続けている米国でも、需給改善が続いたため、雇用の質も改善し安定的な賃金上昇が起きている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら