インドの沙漠で痛感した日本人のヤバい「劣化」 電気まみれの生活で日本人が失ったものとは

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ある時パーブーが密造酒のグラスを傾けながら、深夜に尋ねてきた。

「コーダイ、いまラクダがどこにいるかわかるかい?」

その日は新月。沙漠は真っ暗闇に沈んでいて、星の光は瞬いているが、地面は静かな風の音がたゆたうばかり。光を発するものなど、ほぼ何もない。

「こんなに真っ暗じゃ、わかるわけがないだろう?」

と告げると、その場で火を囲んでいた5〜6名の男たちが、一斉に笑い出した。

「わからないだって? ハハッ!! さすがにジャパーニー(日本人)だ。どこに行ったって電気まみれで、夜なんて経験したことがないんだろうよ!」

日本は「電気に支配された国」と思われている

彼らは、「メイド・イン・ジャパン」という言葉だけは知っていて、日本といえば全部がテクノロジーに侵され、電気に支配された国だと思っている(そして、それはあながち間違っていなかったりする)。

「そうか、こんなに暗い闇の中でも、君らにはラクダの場所がわかるっていうんだな。だったら、僕がこれから指示するので、一斉にラクダのいる場所を指差してみろよ。そうしたら信じてやるよ」

と僕は偉そうな口を叩き、カウントダウンをはじめた。

エーク、ドー、ティーン!(1、2、3!)

すると彼らは、前述の「ヌーンキー・ツリー(チンコの木)」がある方角に近い、バス道に向かう方向の少し右に逸れたあたりを一斉に指差し、ほらみろ!と、これでもかというほど見事なドヤ顔を決めた後、大笑いを始めた。

僕はというと、指を差されたとて、それが正解なのかどうかわからない。あまりに悔しいので、バッグから双眼鏡を取り出し、注意深く地平線を眺めた。地面と大地が混ざり合う、その微妙な境界線にはうっすらと光の差異が見られ、双眼鏡ならラクダを見つけられるだろうと思ったからである。

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