例えば、何かのプロジェクトに成功して、会社から10万円の金一封が支給されることになったとします。何も期待していなかったところに、10万円の金一封がもらえたとしたら、この場合の参照点は「0円」となります。
そのプロジェクトが予想以上の成果を納めて、一時は「20万円の金一封が支給されるらしい」という話があったものの、最終的には10万円に減額されて支給された場合の参照点は「20万円」ということになります。
どちらの場合も、10万円の金一封が支給されている事実は同じですが、前者であれば、素直に「得をした」と感じるものの、後者のケースでは、何となく「損をした」ような気分になります。
実際には、何も損はしていませんが、同じ10万円をもらっても、参照点によって、受け取り方や印象に大きな違いが出るのです。
不幸と感じたり幸せと感じたり…
人間は、自分が設定した参照点を下回ると、自分が不幸だと感じ、わずかでも上回ると幸せだと感じるものなのです。
私がたくさんの高齢者を診ていて感じるのは、年齢を重ねたら参照点を下げたほうが、幸せの基準が下がって、心が満たされるということです。
大金持ちだったり、異性にモテたり、出世街道を一直線に突っ走ってきたような人は、昔の自分と比較して、今の自分をみじめに感じてしまいます。
その一方で、昔はお金がなく、異性にも相手にされず、納得のいかない人生を送ってきた人は、高齢になって特別養護老人ホームに入っても、快適な部屋で過ごせることや、美味しい食事に感謝して、人生の最後に大きな喜びを感じることができます。
幸せの価値観は人それぞれですが、参照点を低くすれば、ささやかな出来事に幸せを感じ取ることができるのです。
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