20年前の3倍「家で看取る」医療を選んだ妻の想い 最期は自宅で…「在宅医療」の中身と費用を解説
山中さんも、「手術や大がかりなCT、MRIの検査はできませんが、それ以外は病院と同じことができます」と言う。
特に重視しているのは、がんなどの末期で起こる痛み、息苦しさ、不安への対策だ。今の在宅医療では、きちんとした管理下であれば、自宅にいながらモルヒネなどの医療用麻薬を使うことが可能になっている。
「患者さんやご家族には、『苦痛は100%取れます』とお話ししています。むしろ、安心できる自宅にいることで気持ちが落ち着くのか、自宅に戻るだけで、“痛みが和らいだ”とおっしゃるがん患者さんも少なくありません」(山中さん)
この「安心感」は重要なキーワードのようだ。初めての在宅医療で夫を看取った松村さんは、夜間に心配なことがあって診療所に電話をすると、いつも包み込まれるような感じを受けたと語る。
「話すトーン、スピードが落ち着いているんです。こちらが伝えたいことが伝わって、どうすればいいかがわかった瞬間、本当に気持ちが楽になるんです」(松村さん)
1カ月の自己負担の目安は
在宅でできることや、メリットなどについては何となくわかったが、どれくらいお金がかかるのかについて、不安だという声もあるだろう。
在宅医療は公的医療保険で利用できる。費用は患者の病状や診療内容などによって細かく決まっているが、1割負担なら計画的な月2回の定期訪問で月6500~8500円が目安。このなかに基本的な診察や傷の処置、痰の吸引といった医療行為の費用が含まれている。
患者・家族側の求めで医師が臨時に訪問する“往診”の場合は、往診料が別途かかり、1回720円(1割負担の場合)を基本に、時間帯などに応じて加算される。また、インフルエンザの予防接種など、保険が利かないものは患者の実費となる。
先に挙げた医療行為に含まれない治療や、往診の回数が積み重なって、1カ月の医療費が高額になった場合、一定額を超えたぶんが払い戻される「高額療養費制度」が使える。70歳以上で年収156万~約370万円なら、自己負担の上限は月1万8000円となる(関連記事:高額化するがん治療「高額療養費」でいくら戻る?)。
さらに、訪問看護や訪問介護には、別の費用体系がある。
訪問看護は「介護保険」または「公的医療保険」、訪問介護は「介護保険」で利用できる。
これらも地域やサービスを受ける人の状態、内容によって異なるが、日常生活のほぼすべてに介助が必要な人は、最大で月40万円程度(1割負担なら4万円くらい)の看護・介護のサービスを介護保険で利用できる。具体的には、1日2回の訪問介護と週2回の訪問看護、週2回のデイサービス(通所型の介護サービス)だ。
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