20年前の3倍「家で看取る」医療を選んだ妻の想い 最期は自宅で…「在宅医療」の中身と費用を解説

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対象となる病気は、がん、精神疾患、脳卒中の後遺症、認知症、心臓病、パーキンソン病など幅広い。最期が近い、筋肉や関節が衰えて移動が難しい、自宅に引きこもっている……。それぞれに通院困難な事情を抱えている患者やその家族が、「しろひげ」の訪問を待っている。

江戸川区の松村さん(80代・女性)もその1人。正確には、「待っていた」1人だ。

松村さんの夫は脳腫瘍を患い、80歳で亡くなるまでの約2年間、在宅医療を利用した。病院から退院するタイミングで、松村さんが「駅の看板で見かけ、『ここだ!』と思った」のが、しろひげ在宅診療所だった。

「排泄・排便の介助も、たとえ本人が暴れても、落ち着いて、嫌な顔ひとつ見せずにやってくれた。何より、医師も、看護師さんもゆったりと構え、夫を1人の人間として見てくれました。本人も、最期まで人間らしく生きることができたと思います」(松村さん)

「あの経験があるからこそ、今も心穏やかでいられる」と言う。

自宅で夫をみていたときの気持ちがアルバムに綴られている(写真:編集部撮影)※写真は一部加工しています

痛み・不安を取り除くことも

在宅医療は月に2回、定期的に訪問するのが標準のシステム。診療の内容は患者の状態などによって異なるが、問診したり、聴診器をあてたり、血圧を測ったりする。

また、薬の処方や点滴、人工呼吸器や胃ろう(胃に小さな穴を開けて、チューブで栄養剤を入れる方法)の管理、寝たきりで生じやすい褥瘡(じょくそう:床ずれ)の処置なども行われており、病院でのそれとあまり変わらない。

約20年前から在宅医療に取り組み、1都3県と愛知、鹿児島、沖縄に計24拠点の在宅診療所を構える悠翔会の理事長・診療部長、佐々木淳さんは、「“在宅では病院よりできることが少ないので、病院にいたほうが安心”と思うかもしれませんが、在宅でできる範囲が広がっています」と話す。

例えば、今は持ち運びができるコンパクトな画像検査の機器もあるので、それを活用すれば、ある程度の検査は可能だ。

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