20年前の3倍「家で看取る」医療を選んだ妻の想い 最期は自宅で…「在宅医療」の中身と費用を解説

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本人の状態や、治療の内容にもよるので一概に比較できないが、入院した場合の自己負担費用が1日平均約2万円(生命保険文化センターの2022年度調査)であることを考えると、概ね入院より安くすむといえるだろう。

何より「自分の家という、ご自身の選択が尊重される場所で過ごすことは、特に残された時間が限られるがん患者さんにとって、重要です」(前出・佐々木さん)。

仕事をしながら膵がんの夫を看取る

江戸川区のNさん(50代)は、膵がんの夫(享年59)を自宅で看取った。

夫は温厚な人柄で、「ガハハ」とよく笑う人だった。Nさんも明るい人で、「在宅医療は初めてでしたが、できる限りのことをして、私と娘で笑顔で送り出そうと決めました。『しろひげ』の皆さんに守られて、貫くことができました」と話してくれた。

夫は、膵がんを患う前に脳卒中を発症しており、その後遺症のため歩けなかった。そのため、しろひげ在宅診療所を利用していた。

Nさんはフルタイムの仕事を続けながら、夫を在宅でみていて、多忙な毎日を送っていた。具体的には、朝は6時に起床。夫のケア(胃ろうへの栄養剤注入、トイレの介助、洗顔や歯磨きなど)をして、デイサービスに送り出す――という具合だ。同時にNさんも出勤する。

夫がデイサービスから帰宅する時間は、Nさんが帰宅する時間より早い。そのため、ヘルパーに出迎えてもらっていた。Nさんが帰宅するのは夕方6時半過ぎで、そこから再び夫のケアをする。デイサービスで使った着替えやバスタオルの洗濯をすませ、寝るのは深夜1時になる。

そんななかでも、Nさんは在宅医の訪問日には仕事をやりくりして家にいるようにした。

訪問看護に立ち会うことはなかなかできなかったが、「(医療スタッフからの)連絡ノートに詳細に様子が書かれていて、今日あったことがよくわかりました。こちらが困っていることを書いておくとコメントがあり、そばに医療者がいるような安心感がありました」(Nさん)という。

夫にがんが見つかったのは、そんななかだった。

「お腹の調子が悪く、やせてきたんです。痛そうに顔をゆがめるのですが、(脳卒中の後遺症で)口がきけないから、どこが痛いかもわかりませんでした」(Nさん)

主治医が診療で異常を察知し、病院を紹介。検査の結果、膵がんと診断された。それからの月日は短かったが、自宅で「悔いのない介護ができた」とNさんは語る。

膵がんに侵されながらも笑顔でいるNさんの夫(写真:編集部撮影)※写真は一部加工しています
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