都心タクシー「プチバブル」早くも終焉の業界事情 稼げる状況に転職者が一時殺到も事業者側が苦境に

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大雑把にいうなら東京や大阪のような都心部の稼働率が高い会社ほど、値上げには慎重というスタンスが目立ち、「うまく循環しつつあるのに値上げにはリスクがある」という意見がある。逆に、地方の稼働率が低い会社ほど賃上げに前向きという言い方をしてもいいかもしれない。

関西のタクシー事業者幹部は、か細い声でこうも打ち明けた。

「近い将来の値上げは避けられないでしょう。ですが、それが今であるかは十分な検証が必要でしょう。まだコロナの傷跡から回復しきれていない状況のため変化は怖いですね」

日常使いをしない利用者に配慮しない

利用者視点では、値上げを歓迎するという意見は稀だろう。法人での利用ができる場合はさておき、値上げにより一般利用を躊躇する者も出てくると考える方が一般的だ。都内のあるタクシー会社代表は、以前私にこんな話をしていた。

「値上げに関係なく、タクシーを利用する人はするし、しない人はしない。それが今のタクシー利用を取り巻く率直な感想です。日常利用の中でタクシーを利用する層は、かなり狭まっている。公共交通機関としての役割はもちろんありますが、普段利用しない層へ配慮する余裕はもはや業界にはありません」

物価高や人件費高騰の波に、タクシー業界も直面している。国交省は2024年度の補正予算案の概要を公表していたが、「賃上げ環境の整備」「地方創生」などの関係予算は2兆2478億円にものぼる。私たちの日常にも関わるタクシーの値上げの是非を問う議論は、来年以降本格的に進んでいくことになるだろう。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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