「情弱な被害者ではない」闇バイト応募者の本性 「だまされた普通の人々」は作り上げられた虚像である

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一昔前ならば、このようなパーソナリティを有する若者は、暴走族に入ったり、不良グループに関わっていたりして、犯罪に加担していたケースが多かった。今は犯罪集団というものがほぼ壊滅に近い状態であるため、バーチャルな世界でつながってこうした犯行を重ねているのだ。

反社会的パーソナリティとは

いつの時代でも、反社会的パーソナリティを有する人々は人口の数パーセントはいるとされている。そうした人々は、仕事が長続きしない、衝動的である、目の前の快楽に飛びつき長期的な結末を考えない、共感性が欠如し人の痛みがわからない、良心の呵責がない、自己中心的であるなどの特徴を共通して備えている。今回の実行犯のパーソナリティにもこれらがぴたりと当てはまる。

実は、犯罪心理学において、犯罪の最も大きなリスクファクターとされるものが、これら反社会的パーソナリティや反社会的態度なのだ。

例えば、実行役の一人は、弁護士に「何年くらいで刑務所を出られますか」と聞いて「一生出られないよ」と聞いて驚愕したと報じられているが、このエピソードはまさに象徴的で、彼の自己中心性や長期的な見通しが持てない愚かさがよく表れている。

「普通の主婦」にしても同様だ。報道によると、彼女は夫から繰り返し闇バイトに応じることを頼まれて断り切れなかったという。夫は振り込め詐欺などにも関わっており、「トクリュウ」とも何らかの関係があったとされている。

夫が組織犯罪に関わっており、犯罪で生計を立てていた主婦のどこが「普通の主婦」だというのだろうか? やはり、そもそも犯罪と親和性の高い人物だったと見るべきだ。

かつて、「主婦や学生にも覚醒剤が蔓延している」などというニュースが世間を驚かせたことがあったが、それも同じだ。普通の主婦や学生は覚醒剤などには興味を抱かない。むしろ嫌悪感や恐怖を抱き、違法薬物などからは距離を置くのが「普通の人」だ。それに対して、興味関心を抱くのは、やはり反社会的なパーソナリティや態度の表れにほかならない。

一連の事件で最も責められるべきは、もちろん首謀者であり、いまだどこにいるか影もつかめていない指示役であることは間違いない。しかし、だからといって、実行役の責任を過小評価したり、ある意味で被害者であるかのような報道をすることは、被害の大きさや社会的影響を考えると厳に慎むべきである。

原田 隆之 筑波大学教授

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はらだ たかゆき / Takayuki Harada

1964年生まれ。一橋大学大学院博士後期課程中退、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校大学院修士課程修了。法務省法務専門官、国連Associate Expert等を歴任。筑波大学教授。保健学博士(東京大学)。東京大学大学院医学系研究科客員研究員。主たる研究領域は、犯罪心理学、認知行動療法とエビデンスに基づいた心理臨床である。テーマとしては、犯罪・非行、依存症、性犯罪等に対する実証的研究を行っている

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