タワレコとヴィレヴァン、明暗を分けた「本質差」 山ほどある判断の違い、一番大きかったのはここだ

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その点で、同じ「カルチャー企業」でありながらも、対極にあるのが、この2つの企業であると感じられるのだ。だから、タワレコのニュースを聞いたときに、ヴィレヴァンのことを思い出してしまったわけである。

「選択と集中」がにぎわいを生み出す

タワレコ復活の要因となった「選択と集中」は実は、現在多くの商業施設や観光地などで、にぎわい創出のカギとなっている。

例えば渋谷PARCOでは、「Nintendo TOKYO」「ポケモンセンターシブヤ」といったIPコンテンツを扱ったショップや、地下1階にあるレストランフロア「CHAOS KITCHEN」(「食・音楽・カルチャー」をコンセプトに、飲食店と物販店が混在している)を設けることで、訪日客に支持される施設となっている。いろいろある日本のカルチャーの中でも、訪日客に馴染みのあるコンテンツに重きを置いているのがポイントだ。

また、やや唐突に聞こえるかもしれないが、現在多くのインバウンド観光客を抱え、日本の観光地の成功例といわれている北海道「ニセコ」も、この「選択と集中」によってにぎわいを作り出すことに成功した例だ。

『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか 「地方創生」「観光立国」の無残な結末』(講談社+α新書、2020年)の中で著者の高橋克英はニセコが観光地として成功した理由について、そのコア客層である「外国人富裕層」に向けた「選択と集中」の戦略が功を奏したからだと分析している。

確かにそこには英語の看板が立ち並び、働いている人は英語ばかりを使うし、日本であって日本でないような光景がニセコには広がっている。

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観光地と商業施設ではさまざまな条件が異なるかもしれない。しかし、好みが多様化し、ネットを通じて個々人の好みに合うものを比較検討することが容易になった現在、それぞれの層の趣味嗜好に徹底的にマッチするような場所が求められていることは自然な流れであろう。

その点でも、ニセコとタワレコはこの「選択と集中」が求められる現代社会にマッチしているといえるのだ。令和の観光ビジネスを考えるうえでは、もはや必修科目と言えるだろう。

本記事では、タワレコとヴィレヴァンを比較しながら論を進めてきたが、タワレコは「選択と集中」を進めて復活した。であれば、同じようにカルチャーを扱うヴィレヴァンもまだ再興の余地はあるはずだ。

まずは、その主要顧客をどこに置いて「選択と集中」を進めるのか。そこから考える必要があるのではないだろうか。

谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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