「仕事と家庭」両立しようと疲弊する人の根本原因 禅僧が解説「疲れや不安を手放す」生き方
たとえば、誰かにメールを送信したあとに「相手が気分を害するようなことがなければいいが……と感じる」という程度の不安であれば、なんらかの対策を事前に講じれば済む。ところが考えすぎる傾向にある人たちは、際限なく悪い方向に考え続けてしまう。つまり、これが「不安を転がしている」状態なのである。
著者はその点を踏まえたうえで、「いま、この瞬間」を生きるべきだと主張している。
不安の出どころについて考えてみてください。不安とは、今よりも少し先の未来を思い煩うから生じるもの。現実には何も困ったことは起きていないのに、「ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう」と余計な気を回すから不安になるのです。(「はじめに」より)
だが、現実問題としてそういった不安に実体はない。いわば妄想や思い込み、取り越し苦労でしかないということだ。実際のところ人生とは思いのほか「なんとかなる」ものであり、際限なく湧き出る不安が的中することはほとんどないのである。「いま、この瞬間」をひたすらに生きることが大切なのだ。
だからこそ著者も本書を通じ、「不安を転がさずに生きるための禅の教え」「『いま、この瞬間』を生きるための禅の教え」を伝えようとしているのである。私たちはそれを理解するために、まずは自分の「希望」や「恐れ」の実態を再認識するべきかもしれない。
「盛る」より「足る」で生きる
人はなにかと、他人と自分とを比較してしまうものだ。「自分は自分、他人は他人」と頭では理解していたとしても、仕事の実力や収入、あるいは外見など、なんらかの点において自分より優れた人が目に入ると、平静ではいられなくなってしまうことも少なくないのである。その結果、「それに引き換え……」と自分のことを卑下したり、嫉妬や恨み、怒り、憎しみなどのネガティブな思いを肥大化させてしまうこともあるだろう。
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