外遊びが減ると低下するのは運動能力だけではない イノベーション人材の育成に必要な「遊び」

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為末:はい。詰め込み型というか、「こうすればトップ選手になれる」というパターンがあるといわれていて、それをいかに早い段階から実践していくかが重視されています。だから、ある競技でトップクラスの選手が、ほかのスポーツをした経験がほとんどなかったりするんです。

窪田:それは意外でした。

為末:本来であれば、外遊びのように自分たちでルールを決める創造性の高いものと、ドリブル練習のように決められたトレーニングと、どちらもバランスよく取り入れたほうが総合的な運動能力は上がります。しかし、月曜から金曜までずっと同じトレーニングをこなしていくような育成方法が一般的です。

スポーツに「遊び的」な要素が必要

窪田:そうなんですね。私が幼少期を過ごしたアメリカでは、シーズンスポーツが一般的で、秋はサッカー、冬はアイスホッケーのように季節ごとに違うスポーツを体験します。競技を絞って専門性を高めていくのは、高校生くらいから。その結果、あれだけのアスリート大国になっている。

為末:アメリカのように掛け持ちでスポーツをするのは「マルチスポーツ」と呼ばれていて、私もそのほうがいいと思っているのですが、日本ではどちらかというと早い段階から1つの競技に特化していく「早期教育」が主流です。

窪田:幼少期から1つに絞ることで、トップ選手を育てようという発想なんですね。

為末:早く始めればそれだけ早く上達するので、10代でピークを迎えるには非常によくできたシステムではあります。ただ、長期的に伸びていく選手を育成したり、スポーツが得意ではないけれど好きな人を増やしたりするのにはあまり向いていません。

スポーツをしようと思ったときに、もっと遊びに近いものがないと、嫌いになってしまう人が出やすい。日本はそこが弱いですね。トップ選手を育てることも大事ですが、より多くの人がスポーツを始められるようにサポートしていくことも重要だと思っています。最近では少しずつですが、マルチスポーツを取り入れようとする動きも出始めています。

窪田:なるほど。たくさんの人にスポーツに興味を持ってもらうためにも、遊び的な要素を取り入れる必要があると。外遊びの話にもつながりそうです。次回、続きを聞かせてください。

(構成:安藤梢)

窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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為末 大 元陸上選手

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ためすえ だい / Dai Tamesue

Deportare Partners代表。1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2024年12月現在)。現在はスポーツ事業を行うほか、アスリートとしての学びをまとめた近著『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』を通じて、人間の熟達について探求する。その他、主な著作は『Winning Alone』『諦める力』など。

 

 

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