そんな日々が約3カ月続いたある冬の日。由紀さんは息子さんの様子を見てあることを感じ取ります。
「その日は大雪が降りました。息子は雪が大好きなんです。いつもなら『先生たちが来られなくて、学校に行けば遊べるかもしれない!』と喜ぶはずなのに、その日は一歩も外に出ようとしないんです。それを見て私は、ああこの子はもう当分学校に行かないな……と感じました」
由紀さんは息子さんの不登校を受け止めましたが、だからといって簡単にあきらめることはできませんでした。
何を言っても息子に響かず家がぐちゃぐちゃに
「朝学校に行けずつらそうにしていると、つい言ってしまうんですよね。『学校に行かないとダメになっちゃうよ』って。そうしたら『もう僕はいらないんだ』と言ったり、『死んだほうがマシだ!』と窓から飛び降りようとしました。包丁を持ち出したこともありました」
「『そんなことを言うとお母さんは悲しい!』と伝えたり、『死ぬことはどういうことなのか』を何度も説明しましたが、息子には何ひとつ響きませんでした。この頃が我が家の″底辺”でしたね。ぐちゃぐちゃで何をしてもうまくいきませんでした」
由紀さんは不登校の相談に乗ってくれそうな機関を探して駆け込みます。
「どこに相談してもこちらの状況を詳しく伝えるだけで終わってしまうんです。『お母さん、大変ですね』と共感してくれますが、肝心の具体的な解決策は教えてくれません。いったいなんのための相談機関なんだろうってくやしくて泣きながら帰りました」
「最初にお話ししたように、不登校の初期はいろいろ試しました。押したり引いたり、目の前にニンジンをぶら下げてみたり。勇気づけたり褒めたりもしました。そうすることでうまくいく日もあるんです。でも、どんどん勉強が遅れていく焦りや、すんなり学校に行けない息子を見ると、この子の将来はいったいどうなるんだろうと、すごく不安になるんです。そうすると、無理にでも学校に行かせたい気持ちが湧いてきて、また息子は荒れてしまうんです」
「当時の私は何をすれば息子が学校に行くのか、その答えばかりを探していました。苦しかったですね」
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