企画を通す人が実践する「2軸グラフの法則」 数字の使い方次第で、説得力は大きく変わる
特に多くの人がしがちな、1軸だけのデータ整理との比較をすると、その違いがよくわかります。
中国人によるいわゆる“爆買い”など、近年来日する外国人の数が目立つようになってきました。京都など有名な観光地では、英語や中国語での表記も当たり前の光景になっています。ではどのくらい増えているのか。
日本政府観光局(JNTO)のデータをグラフ化すると、次のようになります。
この結果を見てどんな情報が得られるか考えてみましょう。
来日外国人数にばかり目が奪われていますが……
確かに、実際の来日者数がおよそここ1~2年でグンと伸びていることがわかります。では、それ以外に何か見えてくるものはあるでしょうか。
「う~ん……」とここでストップしてしまい、「外国人数の推移」などというタイトルを付けて、社内向け資料に張り付けて終わり……というケースが目に浮かぶようです。
でもここでさらに少しだけ考えを深めてみましょう。たとえば、
「日本に“入ってくる”人数が増えているのであれば、“出ていく”人はどうなのだろう?」や、
「日本に興味を持つ外国人に比べ、日本人の外国への興味はどう変わっているのだろうか」
といったことです。
そこで、日本から海外に渡航する人数をもうひとつの軸(横軸)により、2つを掛け合わせて散布図上に示してみます(出典:日本政府観光局、JNTO)。
たとえば、平成26(2014)年の実績は、「訪日外客数」が約1340万人で、これは先の棒グラフと同じ情報です。同時にこの年の「出国日本人数」は、横軸に示されるように約1690万人と読み取れます。(図中点線部分参照)
訪日人数と、出国人数が同じになる点を示す45度線も参考に付け加えてみました。すると、こんなことが見えてきました。
・昭和39年を出発点とし、時間が経つにつれ左下から右上に移ってきています
・最初の数年を除いて、つねに「出国人数」が「訪日人数」を上回っています(45度線よりも下に分布)。
・ただ、その変化は、45度線からずっと離れるかと思われたものの、1500万人を超えてから20年近くほとんど増えてはいないこともわかります(日本の人口そのものが増えていないという背景も大きいと思います)
・その一方で、来日人数がここ数年顕著に増えているため、45度線に一気に近づいています。来日人数が、出国人数を超える日も遠くないかもしれません。
このように、2つのデータを2軸で掛け合わせてとらえることで、1軸でしか見えていなかったことに新たな意味や情報を付加することができます。もちろん、ここでの2軸目が「出国者数」である必要性はありません。「為替」でもいいかもしれませんし、「他国の外国人来訪者数」でもいいかもしれません。いずれにせよ、「何が知りたい」という“課題意識”と、「きっとこのデータを使うとこんなことが見えるかもしれない」という“仮説”を最初に持つことがスタートです。
別の例でも見てみましょう。
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