企画を通す人が実践する「2軸グラフの法則」 数字の使い方次第で、説得力は大きく変わる

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そこで、たとえばわかりやすい「ラーメン店舗数」という外部環境の影響を見てみるとしましょう。つまり、「消費が多いということはそれだけ“消費を誘う”環境が近くにある=ラーメン店舗が多い」のではないかという仮説が出てくるわけです。

ベースを揃えて、より傾向をわかりやすく

都道府県別のラーメン店舗数のデータは入手できるのですが、もちろん県ごとに人口や広さなど違うはずですので、ベースを揃える必要があります。ここでは、1万世帯数で店舗数を割って2軸目の指標にしてみました。

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(注)数字は、平成24~26年の平均 (出典:総務省)

想定どおりでしょうか。かなり明確に右肩上がりの傾向が見えてきました。つまり、ラーメンを多く消費する地域は、世帯当たりの店舗数も多いのです。これだけでは、「消費量が多いため、店舗数も増やした」のか「店舗数が多いから多く食べられるのか」まではわかりません。

ただ、平均的な線からかい離した地域に着目すると、たとえば鳥取県などは、消費額が店舗数に見合ったところまで達していません。先のグラフの結果と併せて考えると、魅力的なラーメン店が少ないのか、インスタントラーメン派が多いのかもしれません。

一方、福島県や宮城県、福井県は店舗数の割には相対的に多く消費されている地域であることがわかります。有望な市場という観点からは、まずは出店候補地として挙がるかもしれませんね。

このように、1軸で結果を整理するだけでは見えてこない、”結果の裏側“が2軸目を組み合わせることで見えてくることがあります。そのためには、次のポイントを覚えておきましょう。

・仮説を最初に立てて、適切な2軸を選ぶこと

・そのままのデータを使ってよいかどうかを確認(世帯数や面積で割る、などベースを揃える)

・結果の解釈(この結果からすなわち何が言えるのか)を言葉で表して、意味(価値)がある分析であるかどうかを確認

ここでは、ありもののデータをできる限り活用して情報を絞り出す、という一般実務と近い環境で分析しました。もちろん厳密なことを言えば、縦横軸で「政令都市別」と「県別」でまったく同じ前提ではない、とか、1万世帯ごとの店舗数といっても1万世帯が占める面積が地方により違うなど、精度を上げようとすればいくらでも目に付くところはあります。ただ、分析専門家が専門的分析業務を行う場合や、コンサルがレポートを作る場合などは別として、一般実務では、一定の精度を担保しつつも「いかに制約の中からできる限りの情報を絞り出して意思決定につなげるか」が命となることも心得ておきたいところです。

このような、分析手法や統計知識だけに頼らず、数字を見る、データを分析するために必ず必要となる考え方や視点を近著『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術』(SBクリエイティブ)では紹介しています。是非、データを仕事でどんどん使えるようになりたい、と考えている方はお手に取ってみてください。

柏木 吉基 データ&ストーリー代表

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かしわぎ よしき

多摩大学大学院 ビジネススクール客員教授。横浜国立大学・亜細亜大学 非常勤講師。
神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒後、日立製作所入社。2003年MBAを取得後、2004年日産自動車へ。海外マーケティング&セールス部門、組織開発部等を経て2014年独立。グローバル組織の中で、社内変革プロジェクトのパイロットを務め、経営課題の解決、新規事業の提案等、データやロジックを組織の意思決定に活かした数多くの実績と経験を持ち、これらを強みに活動している。現在、大手百貨店やメーカー、地方自治体などへの企業研修や実務で成果を出せるデータリテラシー定着のためのコンサルティングやスキル育成サポートを行なう。大学や大学院での実践的なビジネス授業も英語・日本語で展開している。世界120か国、旧東海道500キロを踏破。
著書に『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術』(SBクリエイティブ)など。

 

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