「是枝氏とCHANELのタッグ」示した映画界の課題 早大でワークショップ開催、観客達の高い熱量
次のトークセッションに登壇したのは役所広司。是枝裕和監督、西川美和監督と向き合い、役者人生のはじまりから、独自の芝居論にまで踏み込み、3人それぞれが辿ってきた映画人としての人生をぶつけあう、穏やかな空気が流れながらも、白熱したトークが繰り広げられた。
質疑の時間は、新人俳優や役者志望の若者たちから、芝居の細かな技術的な部分や、メンタルのあり方など多くの質問が飛び交い、熱量の高いセッションが繰り広げられた。
芝居について役所が説いたのは、台本に縛られるのではなく、常にリラックスすること。ふだんから人はさまざまな実生活の場面で、時に嘘をついたり、芝居をして生きている。それらを台本にもあてはめて演じるという話には、会場中が頷いていた。また、若手監督からの「どうしたら役所さんに出演してもらえますか?」という質問には、「脚本を読ませてよ」とフランクに答え、会場を和ませていた。
役所広司がワークショップで語ったこと
続くワークショップでは、監督と俳優2人の3人1組の2チームが登壇。事前に渡された台本をもとに、監督が俳優たちを演出・撮影をする、一連の流れを行った。それに対して、役所、是枝監督、西川監督がアドバイスをした。
役所は、状況によるセリフの間や、感情による声のトーンなどについての意見を出し、是枝監督はカット割りや役者の配置の変化など見せ方のバリエーションのアイデアを指南した。
この日のワークショップ用の台本を書き、監督の1人として演出を行った寺田ともかさんは、社会福祉士として働きながら、助監督を務めている。まだ自主映画などでの監督経験はない。
本格的なワークショップは今回が初めてで、与えられた時間内で俳優役の2人に演出をしながらシーンを撮り、役所からのアドバイスを受けた。
「役柄の背景や人柄など、私が意図していなかった部分まで汲み取ってくださる脚本読解の深さや視点が勉強になりました。役者さんの解釈によって、自分が思っていた以上のものが現場で生まれる経験をさせていただきました」(寺田さん)
一方、是枝監督からは設定と画作りへの指南を受け、「映像で画面に映ったときに何を語れるかということへの考えが足りていなかったことに気づかされました」とも語ってくれた。
今回のワークショップを終えて「第一線で活躍されている方々に囲まれる緊張感はもちろんあったのですが、私たちを育てようと思ってここに来てくれた仲間だということが実感できて、安心感を持って参加することができました」と、寺田さんは振り返った。
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