「是枝氏とCHANELのタッグ」示した映画界の課題 早大でワークショップ開催、観客達の高い熱量

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2日目は、是枝監督と西川監督はサポートにまわり、安藤サクラのワークショップからスタート。監督と俳優が組む3チームが登壇すると、裸足になって体を動かしたり、大声を出したりしてリラックスする、安藤サクラ流の導入からはじまった。

安藤は「大事なのは演技をすることではなく、そこに自然な自分の存在があること。そのために必要なのは、周囲の人とつながって、感情や感覚をキャッチできる状態を探すこと。ステージも客席も一緒にキャッチできる環境と体を作っていきたい」と話し、会場全体の力を抜いてリラックスさせた。

そして、それぞれのチームのセッションには、安藤自身も役者のひとりとして加わり、台本通りだけではなく、アドリブのセッションを入れたり、役者同士の演じる役柄を入れ替えたりした。

是枝裕和 シャネル 役所広司 安藤サクラ
ステージと客席の垣根を取っ払った安藤サクラのワークショップ(写真提供:CHANEL)

さらに、是枝監督がその場で客席から希望者を募り、即席の監督と俳優のチームもワークショップに参加するなど、自由度の高いワークショップになった。

ティルダと安藤サクラの演技指導も

安藤サクラに続いて、ティルダ・スウィントンのワークショップも行われた。会場中の参加者の顔を見ながら進めたいと、客席の照明を明るくしたティルダは「いままさにフェローシップの真っ最中です」と、客席からの積極的な参加をうながした。

このセッションでも、監督と俳優の2チームが登壇。ここでティルダがテーマに掲げたのは、顔へのクローズアップの撮影で、俳優は動作や表情の芝居を意識の外に置き、内面的な感情面の揺れ動きに集中できるということ。俳優2人にクローズアップした映像がスクリーンに映し出されながら、英語でのシーンの演出と芝居のセッションが行われた。

ティルダはシーンの途中で細かく止めて、役者の感情や芝居の意図を確認。表情や仕草の意味を解説しながら進められた。

2組目の役者のひとりが緊張でセリフが出てこない状況が繰り返されたときは、その役者の肩を抱きながら「緊張は活用できる。エネルギーの源でもあるんです。自分はできないと思ってしまうのは当たり前。みんな同じ」と話しながら緊張の理由を聞き、少しでもリラックスできる設定に変えて続行された。

安藤の感覚的な部分を大事にする役者同士の反射や反響から生まれる芝居と、ティルダの論理的に詰めていきながらもセリフを超えた表情や感情で伝える芝居は、対照的なアプローチに見えるが、通底するものがあった。

そんな世界的女優2人の芝居の根底にあるクリエイティブに触れることができたこれ以上ない貴重な時間は、あっという間に過ぎ去っていった。その場の誰もがこの日の体験と2人の言葉を胸に深く刻みつけたに違いない。

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