「是枝氏とCHANELのタッグ」示した映画界の課題 早大でワークショップ開催、観客達の高い熱量

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この場には、日本映画界の未来を背負う意識を持つクリエイターたちが集結していた。各セッションの質疑では、客席から大勢の手が上がり、熱心な質問や意見が投げかけられた。

参加者の若い男性監督からは、現在の日本映画への問題意識として「ストーリーの進行をセリフに頼っていたり、演出や演技が台本の設定をただスムーズに伝えるものになっている。小津安二郎監督や今村昌平監督は、台本をいかに撹乱し、いかに逸脱するかを掲げていた。世界的評価を得た古き良き日本映画が持っていた魅力が廃れているのではないか」という声もあった。

若者からの疑問に対する答え

それに対して是枝監督は「範囲が広すぎて答えが難しい」としながら、「誰もが試行錯誤をしながら、すでにあるものとは違う何かを目指している。たとえば、今日のワークショップの芝居が映像になれば、また違うものになる。セリフをなくすなど現場でできるアプローチはいくらでもある。実験をしていけばいい」と会場全体に投げかけた。

ティルダも「台本に忠実でいるかは、ワークショップで大いに活用すべき題材。台本がどう作用するのか。それ以外の要素がどう影響するのか。役者の言葉と意図は一致するのか。ワークショップは、演出で可能なことを探ろうとしている。今日だっていろいろなアイデアが浮かんできた。疑問が答えにたどり着かなくても、実験することに意義がある。直接的に映画作りにつながらなくてもいい。大胆なエクササイズをしていきましょう」と前向きな言葉を語った。

是枝裕和 シャネル 役所広司 安藤サクラ
ティルダ・スウィントンのワークショップに参加した若手監督と俳優たち(写真提供:CHANEL)

ワークショップを終えて、2日間を振り返った是枝監督は「自分にとってもいろいろなことが初めてだった。ティルダさんのワークショップがおもしろすぎて、これをシリーズにしたい」と話すと、それに対してティルダは「ぜひやりましょう。1週間くらいのプログラムを作ります(笑)。私にとっても特別な体験でした。私のほうが是枝監督より楽しみました」と答えた。

おもしろいと感じて楽しむことがすべての根底にある。それが映画という文化であることも改めて感じさせられた。

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