「是枝氏とCHANELのタッグ」示した映画界の課題 早大でワークショップ開催、観客達の高い熱量

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映画が好きで参加したという早稲田大学1年の女子学生2人組は「これだけの人に会えるワークショップは一生に一度あるかないか。こういう機会に恵まれて、本当に幸運だと思っています」と笑顔を見せた。

この学生自身が2日間を振り返ると、役所が自分や身近な人の記憶や出来事を芝居に取り入れていることや、是枝監督が役者が緊張しない環境を作っているのに対して、安藤とティルダは緊張をコントロールし、緊張すら演技に取り込んで活かしている話が印象に残ったという。

文化構想学部の1人は「映画業界志望というわけではないのですが、いろいろな話を聞いて興味を持ちました。文化としての映画産業を支えていきたい気持ちも芽生えました」と答えてくれた。

また、文学部の学生は「映画業界は格式高くて、近寄りがたいイメージがあったのですが、今回のワークショップは映画制作に幅広い人に携わってもらいたいというメッセージが根底にあると感じました。2日間の話を聞いて、もっと聞いてみたくなりました。いまは私もやってみたいなとも思っています」と語ってくれた。

ここで生じた映画への熱量は、映画業界の外の若い世代にもしっかりと届いているようだ。

CHANELと是枝監督から映画界へ問いかけ

今回のワークショップが、従来の一般的なそれと大きく異なるのは、世界のトップスターとクリエイターが講師になることで、自らの成長と映画界の発展への学びのモチベーションが高い若い世代のクリエイターが集まったことだ。そこには、稀に見る熱量の高いセッションが自然に生まれた。

VIPO(映像産業振興機構)でもアクターズワークショップや若手プロデューサー向けのセミナーが行われているが、それとは規模も予算も、その成果さえも、従来のものとは一線を画する大型イベントだった。それは世界的な芸術文化のパトロンであるCHANELだからできたことでもある。

CHANELが是枝裕和監督の活動に共鳴し、彼らの文脈がありながらそこにコミットしたことは、日本映画にとってプラスになったのは間違いない。

ただ、それは本来、映画業界が自らやるべきことだろう。一部の有志の映画人たちが現状の危機感を声高に訴え、文化芸術のパトロンとお互いの未来を豊かにすべく動き出したなか、映画業界はその成功を横目に見るだけでいいのか。

本イベントは、学びの場であるのと同時に、世間の注目を映画に集めるための打ち上げ花火的な役割もあった。その成果を、映画業界は自らへの問いかけとして捉えられるか。そこには日本映画の未来がかかっていると言っても大げさではないだろう。

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