北野武新作「首」、プロが見た驚きの感想【後編】 「次回作への期待が膨らむ」その納得の理由は?
北野武監督の最新映画『首』が11月23日に、ついに公開された。今年5月に行われたカンヌ国際映画祭では大きく話題になったが、「映画通」の文芸評論家・高澤秀次氏はどう評価するか──。
高澤氏は「日本映画大学」の前身となる「日本映画学校」では講師を務め、近畿大学大学院では大島渚、吉田喜重、鈴木清順などの作品について講義を行い、苫小牧駒澤大学(現・北洋大学)では宮崎駿全作品の解読も行っている。
北野武監督に関しては1985年に『ビートたけしの過激発想の構造』(KKベストブック)を上梓したことがある高澤氏が、新作映画『首』について独自目線でひもといていく。
※本記事は多くのネタバレを含んでいますので、まだ映画を観ていない人はご注意ください。
*この記事の前半:北野武新作「首」、プロが見た驚きの感想【前編】
着々と映画的な「軍団」を築き上げてきた北野武監督
前回は北野武監督の新作『首』をめぐり、失敗作の理由について述べたが、今回はそれが「価値ある失敗作」であることの真意について考えてみよう。
まずはキャスティングの勝利によって、『首』は次回作への期待を膨らませることに成功していることが挙げられる。
かつて俳優・津川雅彦は、北野映画への批判を、「役者を育てもせずに」と嫌みたっぷりに語ったものだ。
だが、出来上がった俳優を集めて映画を撮ることは、撮影所システムとはまったく別の場所から出てきた、このたぐいまれな映像作家にとって、自明の条件にすぎなかっただろう。
ただ、監督に予定されていた深作欣二のスタッフを引き継いで撮った処女作『その男、凶暴につき』(1989年)以後、北野は着々と映画的な「軍団」(北野組に加わることは今や俳優のステータスになっている)を築き上げてきた。
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