シングルマザーには「起業家」という道がある

「不安」は新しい挑戦への強力な原動力だ

その後4年間で、パソコンスクールやビジネス合宿所の運営、スポーツ自転車に特化した駐輪場のオープンなど多彩な事業を展開し、15年7月には会社を買い取った。だが、大崎さんの挑戦はまだまだこれから。「やりたいと思ってできていないことがいっぱいあるんです。ずっと新しいことをしていたい」と、目を輝かせる。

「カネ・家・仕事」”3ない”からのスタート

大阪府豊中市にある「団欒長屋」は、一軒家を改装した子育て支援拠点だ。「長屋」とあるのは、隣近所で困ったことがあれば「お互いさま」の精神で助け合うような共生社会を目指しているから。いわば、”向こう3軒両隣”の現代版だ。地域で暮らすさまざまな年代の人たちが集まり、子どもを中心とした交流拠点になっている。

この「団欒長屋プロジェクト」を主宰するのは、渕上桃子さん(37)。5歳の子どもを育てるシングルマザーだ。子どもが生後8カ月のときに離婚して「おカネもない、仕事もない、住むところもない」というゼロからのスタートだった。実家を頼ることもできず、住まいは趣味仲間を頼って安価で借りた。生計を立てるために、仕事と子どもの預け先を早急に探さなければならない。ベビーカーを押して駆けずり回る日々が続いた。

渕上桃子さんは地域のイベントに積極的にかかわり、「誰かが何かをやる」と聞けば駆けつける。そうした一つひとつの積み重ねで、地域の人たちとのつながりを築いていった

まもなく、大阪市内にある母子家庭の就労支援に取り組む会社に就職する。入社当初は事務を担当していたが、やがて会社が豊中の地域情報サイトの立ち上げと運営を受託することとなると、その制作メンバーに加わった。「仕事で大阪市内に出てしまうと、自宅のある豊中市には帰って寝るだけでした。仕事を通して、自分が暮らす地域のことを知ることができたのはラッキーでした」。地元のベーカリーやカフェ、ギャラリーのオーナー、手作り作家のほか、町づくりやひとり親支援など社会活動に取り組むグループなど、さまざまな分野の人たちに取材をして、話を聞いた。そのうち、仕事の枠を超えて個人的にも地域のイベントに参加したり、交流したりするようになり、町への愛着が強くなっていったという。

次ページ「思い」だけで動き出した「団欒長屋プロジェクト」
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