シングルマザーには「起業家」という道がある

「不安」は新しい挑戦への強力な原動力だ

自分の店のことだけでなく、町全体を盛り上げようと奮闘するオーナーや、町が抱える課題に向き合う人たちの思いと情熱、行動力を間近で感じるうち、渕上さんの中に「この町で根を張ってやっていきたい」という思いが芽生えてくる。「この町で頑張る同世代の人たちからも話を聞いて、私もここで頑張りたいと思うようになりました。シングルマザーになってから、たくさんの人たちに助けてもらいましたから、その受けたご恩を、今度はこの町で困っている人たちに返していきたいと思ったんです」。

情熱のまま会社を退職

地域情報サイトの立ち上げは1年間のプロジェクトだった。それが終了すると同時に、会社を退職。情熱のままに「団欒長屋プロジェクト」の立ち上げに動く。コンセプトを考え、拠点となる場所を借り、職業訓練校で保育士資格を取得。同時に、取材活動で培った人脈を元に、地域のネットワークも広げていった。

とはいえ、この時点では「ひとり親世帯や働くママをサポートしたい」「ひとり親世帯や核家族の子どもを地域全体で育めるようにしたい」という思いがあるだけで、具体的な事業イメージは持っていなかったという。そんなとき思いがけず、以前取材したことのある学童保育施設が閉鎖されるという連絡が入る。それを聞いて、学童保育施設の運営こそ団欒長屋のコンセプトにぴったりなのではないかと思い当たり、渕上さんはその施設運営を引き継ぐことを決めた。もちろんそれまで利用していた親子を助けたいという思いもあった。

子ども記者が地域の大人たちに取材してつくる「だんらんしんぶん」の活動など、親にとっても「預ける」場所ではなく、「貴重な体験ができる」場所になっている

現在は、毎週土曜日の学童保育をメインに、地域のさまざまな活動グループとつながりながら、昔遊びや絵本の読み聞かせ会、お茶会などさまざまな世代が交流するようなイベントも展開している。開設してからもうすぐ3年。当初は預金通帳とにらめっこする日々が続いていたが、学童保育料金などで回せるようになった。しかし、渕上さんの生計を支えるには至っていない。副業として、不定期でデータ入力の仕事を受けて収入を得ている。

「おばあちゃんになっても、団欒長屋で何かしらしていたいから。焦らずに、ゆっくりと、この場所を育てていきたい」。地域にしっかりと根を張るために、いまは着実に一歩一歩、踏み進めているところだ。

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