「高気密・高断熱住宅」にありがちな5つの誤解 電気代削減につながる「3つの工夫」とは?
特に1点目と2点目については、建物の断熱性を向上させることや、太陽光の日射を効果的にコントロールする設計が鍵となる。建物の設計自体を大幅に変更することは現実的ではないため、最も手軽な対策として窓の断熱性を向上させる方法が挙げられる。
3点目については、太陽光発電パネルや蓄電池の設置により、購入する電力量を減らすことで光熱費を削減する効果が期待できる。
ただし、太陽光発電設備の導入には100万円前後、あるいはそれ以上のコストがかかるため、経済的メリットのみで判断するのではなく、災害時の備えとしての投資効果も考慮すべきである。
高気密・高断熱住宅を選ぶ前に知っておきたい注意点
残念ながら、漠然と「高気密・高断熱住宅にすれば光熱費が削減できる」「快適な環境で健康や省エネというメリットが得られる」わけではない。
正しい知識のもと、それぞれの住まいや暮らし方に合った選択肢を考えることが大切になる。ここからは、高気密・高断熱住宅の利点を最大限に生かすために知っておきたいポイントを5つの視点から解説していく。
先述の通り、断熱性能に優れた高気密・高断熱住宅は、外気温の影響を受けにくく、室内を一定の温度に保ちやすい利点がある。例に挙げたように、厚みのある品質のいいダウンを着れば、寒さをしのぐ効果が高くなる。
ただしダウンジャケットそのものが熱を出して体を暖めてくれるわけではない点に注意が必要だ。暖かい家を実現するためには、断熱性能に加えて、熱源を確保することが重要となる。
具体的には太陽光、エアコンなどの冷暖房設備が熱源にあたる。例えば従来の日本家屋の場合、夏は軒を深く出すことで高い位置からの日差しを遮り、冬は低い位置からの日差しを室内に取り込むことで、自然の力を利用して快適な室内環境を維持してきた。
ところが現代の住宅事情では、限られた敷地の中で軒を深く出すことが難しいケースも多く、特に都市部では「軒ゼロ」住宅が増えてきているのだ。
軒のない住宅の場合、直射日光がもろに窓などから入り込むため、断熱性能が高い住宅ほどかえって「暑い家」となってしまう可能性もある。断熱性の高い家こそ、太陽光の特性を理解し、適切な設計を取り入れることが重要になってくるのだ。
これは冷暖房の設備機器なども同様で、住宅の規模や間取り、断熱性能、そして住む人のライフスタイルによって、必要な機器のパワーは異なってくる。熱源となる設備機器についても、適切な選定と配置を考慮しなければ、断熱性能を生かせない点に注意したい。
基本的な注意点となるが、高気密と高断熱は、それぞれ異なる役割を持つものであり、どちらか一方だけでは十分な効果を発揮できない。
厚くてふかふか、高性能の羽毛を使ったダウンジャケットを着ていたとしても、ボロボロで穴が空いていたり、ファスナーが開けっぱなしだったりしたら、どうだろうか。
穴や隙間から冷気が入ってしまい、暖まりにくくなることは明白だ。つまり高気密と高断熱は組み合わせることで、相乗効果を発揮すると認識しておこう。
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