東京大学の学費値上げには、検討のプロセスが学生に明かされなかったこと以外にも、不可解な面がある。基盤的な経費である国からの運営費交付金の減少によって財政が厳しくなったと大学側が説明する一方、予算を減らしてきた側の政府が学費の値上げを促していたのだ。
今年3月に開かれた中央教育審議会の「高等教育の在り方に関する特別部会」では、慶応義塾大学の伊藤公平塾長が、国公立大学の学費を年間150万円にすることを提言して各メディアに大きく報じられた。5月16日には、自民党の教育・人材力強化調査会が、国立大学は国際競争力を強化するために、値上げを含む適正な授業料の設定をすべきとの提言をまとめた。
東京大学の学費値上げの方針がメディアで報じられ、大学が検討を明らかにしたのも、自民党が提言した日と同じ5月16日だった。値上げは文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会や、政権与党の自民党の方針に沿ったものと言えなくもない。なぜこの時期だったのか、と不審に思う学生も多い。
特定国立大学法人にも指定
さらに、今年10月から東京大学は、特定国立大学法人に指定された。この指定によって、大学の運営方針の決定や総長選考などに強い権限を持つ「運営方針会議」を新たに設置しなければならなくなった。会議は委員3人以上と学長で構成され、大学外部の委員を入れなくてはならないとされていて、委員は文部科学大臣の承認が必要になる。事実上の最高意思決定機関と言える。
東京大学では運営方針会議を総長、理事3人、教職員3人、学外委員7人で構成する規則を発表している。しかし、学生の代表は含まれていない。
11月28日時点では人選は不明で、東京大学に質したところ、次のような回答が返ってきた。
「運営方針委員の選考については、国立大学法人法に規定された総長選考・監察会議との協議が完了し、文部科学大臣の承認申請を行っているところです。大臣承認後、総長による委員の任命が完了しましたら、運営方針委員を公表する予定です」
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