自治会による第2次アンケート調査は、5月の第1次調査に比べると、回答者数も少ない。値上げに反対する割合は1割ほど減っていた。適応されるのは新入生のみで、自分たちは値上げの対象にならないと考えているからだろう。
一方で、第2次調査で回答した学生の約7割は、これから大学院修士課程への進学を決めているか、もしくは検討している学生だった。
東京大学では学部を卒業して大学院に進学する割合が高い。2022年度の卒業生では、大学院への進学が52.8%と半数以上を占めた。第2次アンケート調査の結果を見ても、学部4年間で約43万円、それに大学院の修士課程でも毎年約11万円の値上げが行われることに疑問を持っている学生が多いことがわかる。
ただでさえ経済的なハードルが高い大学院への進学が、さらに厳しいものになるといった危機感もある。それは文系であればなおさらだ。文系の修士課程への進学を目指している教養学部の4年生は、「今回の値上げはマイナスにしかならない」と指摘する。
「文系の修士課程に進むことと、理系の修士課程に進むことはまったく話が違います。理系の場合は修士課程を修了した後でも、条件のよい就職ができるでしょう。しかし、文系の場合は修士課程への進学が就職にプラスになることはありません。
博士課程に進んで大学に就職したいと思っても、ポストが少なく狭き門となっています。卒業後のキャリア形成が大きく異なるのに、学部と修士課程でこれだけの値上げをするのは、文系の院に進もうと思っている学生にとってはかなり厳しくなります」
文系と理系を分けて考える必要
大学院でも文系と理系を比べると、理系のほうが研究費や設備に多額の費用がかかる。にもかかわらず、修士課程の学費が同じで、しかも同様に値上げされることについての抵抗もある。
藤井輝夫総長は、8月に学生向けに公開したメッセージで「財源の多様化を目指す中で、使途が自由で安定的な収入として授業料の値上げも検討せざるをえなかった」と説明。学生から寄せられた「学部や大学院ごとに授業料を変えるべきだ」といった意見に対しては、否定的な考えを示している。このメッセージに対して、前出の4年生は首を傾げる。
「文系と理系を分けては駄目だと、総長がどのようなロジックで言っているのかまったく意味がわかりません。生計を自ら支えている院生は、博士課程だけでなく、修士課程にも一定程度います。文系修士課程の院生に対する支援を拡充するように、今後訴えていきたいと考えています」
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