広告宣伝ゼロでも「SHIRO」が圧倒的支持得るなぜ OEMを経験したからこそ突き詰めたい"本質"

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ブランドが急成長を遂げている最中でもあり、より存在感のあるロゴのほうがグローバルに伝わりやすいという意図のもと、ブランドロゴを変えたのだが、自分たちがどうありたいかに比重を置き過ぎていた。リブランディングの進め方が、少し性急で丁寧さに欠けていた。お客のペースや思いを勘案することを忘れてはならないと自らを戒めたという。

経営陣が走りながらニュースを作っていく

シロが掲げている理念は「世の中をしあわせにする」、ビジョンは「良いものを、より多くの人に届けたい」。創業来の意志を貫きながら、社員に伝え実践していくには、どうしているのかと聞いたところ、「経営陣が走りながら、ニュースを作り続けていくことです」と返ってきた。

経営トップが、次々と新しいことに挑戦し、形にしていく。そうすることで、「SHIROは、理念を守り、ビジョンを達成するために突き進んでいる」と社員は理解し、各々の仕事を通してそれを実行していく。それは社外に向けても同様であるという。

実際、シロは次々とニュースを作っている。

2023年春、ブランドの出身地である北海道砂川市に自社工場である「みんなの工場」を作った。一般の人も製造工程を目の当たりにできるように、壁で仕切るのではなくガラス張りになっている。

また2024年春には、北海道長沼町に一棟貸しの宿泊施設「MAISON SHIRO」をオープン。2階建てのゆったりした戸建てで、SHIROが目指す世界観を丸ごと体験できる場だ。そして現在は、サービス付き高齢者住宅を計画中だという。

コスメから大きく離れた事業にも見えるが、実はそこには一貫した”空気感”が感じ取れる。それは、会長の今井さんが、ブランドのクリエイティブディレクターとして、すべてに目を通していることが大きい。シロのすべての活動において、理論と感性、経営とクリエイティビティ、今井さんと福永さんがそれぞれの個性を生かしてブランドを束ねているのが強みと言える。

一方、今井さんはいわば創業社長であり、その世界観を愛している顧客が多いだけに、未来に向けた継承と継続をどうとらえていくのかは課題の1つだろう。丁寧に育てられた日本発のコスメブランドはどこまで羽ばたけるだろうか。

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川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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