もうひとつ。この失敗は何も国家プロジェクトに限ったことではない。ほとんどすべての日本企業に共通する失敗である。シャープも東芝もソニーもパナソニックも、ほとんどの企業が失敗している。
なぜなら、日本企業はすぐに社運を懸けて、全力で投資するからである。そして、失敗して、破綻の危機に陥る。何が悪いのか。社運を懸けたことである。いかなるときも、1つのプロジェクトに社運を賭けてはいけない。スタートアップでもないのに、捨て身になってはいけない。第2に、懸け方が間違っている。懸けに負けた後のシナリオを用意していない。しかし、いちばん間違っているのは、勝てない懸けに懸けていることである。
短期間で投資を回収する21世紀
前述のように、21世紀の特徴は、先が見えない、変化が激しいことである。技術的にどれが勝ち組になるかわからない。消費者の嗜好がいつ変わるかわからない。だから、皆、製造業での設備投資という固定するような投資はやめてしまったのだ。
就職先も、コンサルティングや投資銀行と、勝ち組をクライアントとし、それに寄生し、寄生先を次々乗り換えていく職業が、人気があるのである。古い企業で勝ち残っているのが商社とリクルートと広告代理店であるのも必然だが、広告は違う戦いになってきたから、もはや危うい。商業銀行もかつては同様にして生き残ってきたが、もはやだいぶ前から危うくなってきている。
じゃあ、製造業はなくなってしまうのか? 残っているのは、部品メーカー、ファウンドリー、そしてトヨタである。不透明、不確実であるから、長期投資は不可能なので、投資回収期間は2年、せいぜい3年である。個人ラーメン店の業界では常識だが、すべての業界で同じになったのが21世紀である。
「えっ、大規模設備投資を2~3年で回収するなんて、不可能では?」と思うだろう。だから、世界をすべて押さえるのである。回収期間を短くするためには、世界市場を独占するしかない。規模も最大にし、交渉力も上げて利益率を上げるのである。だから、ファウンドリーは同じ業界では、世界で1~2社しか存続できないのである。日本企業はそれに気づかず、勇敢に(無謀に)長期的視点で、設備投資をする。原理的に回収できない。必ず失敗する。
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