最後に、2つ述べておく必要がある。最初から気になっていたかと思うが、100%から99.7%を引いた残りである0.3%とは何なのか。それは、「(もちろん目分量で)0.1%ずつ、3つのシナリオ」があるということだ。
「0.1%×3つのシナリオ」とは何か
第1に、世界のすべての国が鎖国をして、すべてのものを国内でまかなわなければならなくなった場合である。半導体に限らず、小麦も大豆も石油もウランもAIも、自国製にしないといけない。半導体を作る以前に、これでは、日本は死んでいる。というかすべての国が死んでいる。だから、考えることは意味がない。0.1%の確率で世界は終わる。
第2に、世界が分断されて、アメリカ、中国、その他のように分かれた場合、必需品は最小限なんとか入手できるかもしれないが、半導体だけ入手できない場合。しかし、この場合は、半導体だけでなく、いろいろなものが足りないであろう。
半導体が手に入ったとしても、それを利用して製造した車を売る先がないであろう。そもそも、このような場合のシナリオは0.1%の確率で起こりうるが、その場合、半導体を100%自給する準備をするよりも、日本国がよりよい外交戦略や外交主体を持てるように、政府組織を整備しておくことがどう考えても重要だ。
第3に、そこまで外交上悪くはないが、半導体をできる限り国内製にしたい、と政治的に日本国家が思ってしまった場合。理由は政治家か、官僚か、国民感情か、何かはわからないが、そういうことは起こりうる。このときは「国内で半導体を作っておいてよかった」ということになるかもしれないが、しかし、その半導体が世界一いい半導体である可能性は低い。
つまり、日本国内のメーカー、消費者は、負け組の製品を、間違った国家戦略により、使うことを強いられたのと同じ状態になるのだ。こうして、日本経済が徐々に弱っていく。競争力がトータルで徐々に失われていく。国家的プロジェクトに巻き込まれてしまったから、とことん破綻となるまで、抜けるわけにもいかない。泥舟に国全体で乗り続けて、すぐにおぼれずに泥舟に乗っていて良かったね、と思う可能性が0.1%である。
これは、今回例示した件だけでなく、ありとあらゆるところで、起きており、起きてきた。今回の件で、いちばん被害にあうのは、北海道経済かもしれない。これに懸けてしまい、別の活動に割くべき、金、人、リソースが奪われてしまい、しかも、逃げ道はない。
しかし、何も今回のプロジェクトだけではない。2009年に稼働を開始したシャープの堺工場は閉鎖され、2004年にはNECエレクトロニクスの半導体工場として稼働を始めた山形県の鶴岡工場は、ルネサンス、そしてソニーおよびTDKと事業主と製造する製品を変えていった。
だいたい5年でその工場の賞味期限は過ぎ、失敗に終わっている。
その他、小さな規模ではありとあらゆる事例がある。かつて工場誘致に躍起だった地方自治体は、工場の誘致ではなく、地域内の自力活性化及び多様な人材を呼び込むというソフト戦略に切り替えている。地方自治体は10年ちょっとで学んだが、国は25年ではまだ時間が足りないようだ。
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