近視は「健康問題」を超えた「社会問題」である 災害などの急激な変化で備えるべきは「見る力」

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春山:実は私も幼少期から「見る」ことにとても興味を持っていました。赤ん坊の頃も言語を発し出すのは遅かったのですが、気になるものがあると飽きもせずジーッと見続ける子でした。

窪田:私も「見る」ことに興味があって眼科医となりました。意外なところに共通点がありましたね(笑)。

春山:そして10代の頃、探検家で写真家の星野道夫さんが撮影した写真や著作に出逢い、山や自然にのめり込むようになりました。その延長で、写真家として生きていこうと決め、20代の頃はグラフィック誌の編集の仕事をしました。写真家は人間の「見る力」を広げる職業だと感じています。

春山慶彦/1980年福岡県春日市出身。同志社大学法学部卒業。アラスカ大学フェアバンクス校野生動物学部中退。ユーラシア旅行社『風の旅人』編集部勤務後、独立。I Tやスマートフォンを活用して、自然や風土の豊かさを再発見する仕組みをつくりたいと思い、2013年にヤマップをサービスリリース。養老孟司さんらとの対談をまとめた『こどもを野に放て!』を出版(撮影:梅谷秀司)

そして、写真家にはもう一つ、素晴らしい仕事がある。それは「人間の世界観を広げる」ことです。編集の仕事を続けるうちに、「見ること」を通じて世界観を広げることは、ビジネスを通じても実現できると気づき今に至ります。

見る力を鍛えるために

窪田:見るという行為は、単に視覚情報を得るだけではなく、物事を認知することでもありますよね。目には、見たい対象物にピントを合わせる機能以上に、脳を機能させて網膜に映し出された対象物をどう認知させるかという大事な働きがあります。

目の前に存在していても、脳が認知しないと気づかない。結局、脳の力がないと、目から入ってきた情報を認識することができません。私の専門領域である近視予防の観点では1日2時間以上、屋外で太陽光を浴びることが大切です。ですが、春山さんの言う「見る力」も鍛えたいのなら、多様な自然が存在する山のような環境で、認知能力を高める訓練が必要ですね。

春山:同じ映像を見ても、人によって理解や世界観の伝わり方がなぜ違うのかよくわかりました。

窪田前回、知性は知覚で作られるというお話がありましたが、その話ともまさにつながっていると感じました。一方で、医師として子育て中の親御さんからよく聞くのが「子どもがスマホやゲームばかりに没頭して、なかなか屋外に出たがらず目の健康が心配」という声です。次回はこのお悩みにフォーカスして春山さんとお話ししたいと思います。

(構成:石原聖子)

窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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春山 慶彦 ヤマップ代表取締役CEO

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はるやま よしひこ / Yoshihiko Haruyama

1980年福岡県春日市出身。同志社大学法学部卒業。アラスカ大学フェアバンクス校野生動物学部中退。ユーラシア旅行社『風の旅人』編集部勤務後、独立。I Tやスマートフォンを活用して、自然や風土の豊かさを再発見する仕組みをつくりたいと思い、2013年にヤマップをサービスリリース。養老孟司さんらとの対談をまとめた『こどもを野に放て!』を出版。

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