近視は「健康問題」を超えた「社会問題」である 災害などの急激な変化で備えるべきは「見る力」

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窪田:そうでしたか。おじい様は目の大切さをよくご存じだったかと思います。

春山:そうですね。私は幼少期にファミコンが流行った世代で、よくゲームをしていましたが、そのことを祖父は否定しませんでした。ただ、「遠くを見なさい」「星を見なさい」とは散々言われました。

窪田:そうなんです、目の健康にとってゲームやテレビ、スマホが一切ダメというわけではないのです。ゲームなどの近見作業と遠く見るという行為、それぞれのバランスをどううまく取るかが大事なのです。食べすぎたら次は食べる量を少し控えるようと思うのと同じことです。

春山:亡き祖父の教えが理にかなっていたとは驚きました。

見ること、見せることで広がる世界観

春山:災害と言えば、私が起業するきっかけとなったのは2011年の3.11(東日本大震災)でした。エネルギーや食料などの重要な問題を「他人任せ」にしすぎてしまった結果があの福島の事故だったと感じました。

これは原発の是非とはまた別の話です。自分たち人間も、そして都市も自然の一部であるという前提で、エネルギーや食をいかに地域で賄うかをもう一度考えないといけない、と。

窪田良/慶応義塾大学医学部卒業。慶応大医学部客員教授、アメリカNASA HRP研究代表者、アメリカシンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経てアメリカワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、アメリカFDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている(撮影:梅谷秀司)

窪田:3.11では、自然災害を目の前にすると人間の力がいかに無力なのかを思い知らされました。

春山:壮絶な経験を少しでもポジティブなものに変換して、次世代、そのまた次の世代に手渡せたらと思いました。それもあり「ヤマップ」というベンチャービジネスを興し、社会に何かしらのインパクトを届けたいと活動を続けてきました。

窪田:この対談の冒頭で登山家・植村直己さんのことに触れましたが、山を登る人は自然に対しても、人間に対しても、とても謙虚ですよね。そしてテクノロジーに対しても謙虚な姿勢を忘れていない。人間が生み出したテクノロジーが自分たちの手に負えない可能性をはらんでいることをよくご存じだと思います。

春山前回お話しした伝統工芸品を作るイヌイットの年配女性もそうですが、自然の素晴らしさと恐ろしさを両方知っているからこその謙虚さは、私たちも受け継ぎたいですね。

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