朝ドラ「おむすび」で"ギャル文化"がスベッたワケ 「平成」リバイバルブームが起きているのになぜ?

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メディアで騒がれているような典型的なギャルは少数派で、テレビや雑誌に影響されてギャルを真似ている子が都心近郊や地方に点在している――といった話は、当時からよく聞いていた。

『おむすび』で描かれているのも、そういう人たちだと言えるだろう。といっても、「そういう人たち」も、やはり少数派だったのではないだろうか? 逆に、描かれている世界自体に違和感を示す声は意外に少ない。不評なのは、世界観の問題ではないようだ。

要するに、ギャルだけでなく、ギャル文化に共感できる人たちは思った以上に少数派。さらにその少数派の人たちは朝ドラを見ていない集団であるということだろう。

おむすび
『おむすび』の制作統括は、平成やギャルを描くことで世の中を元気づけたいと話す(画像:NHK『おむすび』公式サイトより)

今後に期待できるのか?

「時代設定が現代の朝ドラはヒットしない」というセオリーがあるが、主人公が若者で、コアな視聴者が中高年層となると、共感できるところが少なくなってしまうことはやむをえない。

2013年度の朝ドラ『あまちゃん』は、若者層を中心に大きく盛り上がり、社会現象にもなったのだが、視聴率は特別高かったわけでもなく、平均視聴率は、その後の『ごちそうさん』や『花子とアン』のほうが高かった。

『あまちゃん』の時代設定は現代だったが、主人公の天野アキの親世代、祖父母世代の時代も描かれており、中高年の視聴者にとっても、ノスタルジーが感じられる内容になっていた。現代の物語であったが、中高年の視聴者を逃さないための工夫が凝らされていることがうかがえる。

一方、『おむすび』の時代は、朝ドラのコア視聴者である中高年層にとっては、少しばかり近すぎて、懐かしむべき過去として捉えられないように思える。彼らにとって、20年前は、青春時代でもなんでもないのだ。

『おむすび』が平成ギャルを扱ったのは、視聴者を引き付ける要素としては弱いし、現時点ではストーリー上の必然性があるようには見えない。

直近では、ギャルを捨てたヒロイン・結(橋本環奈)の姉の歩(仲里依紗)が登場し、本筋の伏線となるような過去の回想も描かれてきており、ギャルの世界は描かれながらも、やっと朝ドラらしい広がりが見えはじめている。

今後、『おむすび』は、朝ドラとしてどう着地させることができるのか? 物語の展開とともに興味あるところである。筆者としては、もう少しこのドラマに付き合ってみようか――と思っている。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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