「1日コップ8杯の水」はハッキリ言って無駄だ 健康な人が水を大量摂取しても意味がない

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ニューヨークのブルックリンの公園で水をくむ子供たち(写真:Todd Heisler/The New York Times)

ちまたの健康神話のなかでいっこうに消えそうにないのが、「1日にコップ8杯の水を飲む」というもの。ただし、これは事実ではなく、科学的根拠はない。

毎年夏になると、脱水症がいかに危険で、いかに増えているかと警鐘を鳴らす報道があふれる。健康そうに見える大人も子供も、気がついていないだけで実は脱水状態に陥っているのではないか、脱水症が蔓延しているのではないかと不安になってくる。

だが、本当にそうなのだろうか。

私は2007年に英医学会会報で、健康神話に関する論文を共同執筆した。最初に取り上げたのが、「1日コップ(237ミリリットル)8杯の水を飲まなければならない」こと。この論文は、私の研究のなかでかつてないほど話題になった。

しかし、世の中の反応は変わらなかった。2年後には書籍(『からだと健康の“解”体新書:あなたの常識、科学的には非常識?』アーロン・キャロル、レイチェル・ブリーマン共著、邦訳・春秋社)を出版し、1日にコップ8杯の水が必要だという主張の誤りを改めて指摘した。これで人々の不安を解消できると思ったが、まだ甘かった。

水分の大半は食事に含まれている?

「コップ8杯の水」神話の出所は一般に、1945年に米医学研究所食品栄養局(FNB)が、人間は1日に約2.5リットルの水分が必要だと推奨したリポートとされている。ただし、多くの人々が見落としていたが、FNBのリポートには続きがあった。2.5リットルの水分の「大半は、調理済みの食品に含まれている」とも指摘しているのだ。

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