幸福の研究 ハーバード元学長が教える幸福な社会 デレック・ボック著/土屋直樹、茶野努、宮川修子訳 ~政策転換に向けて幸福の実証研究を促す

幸福の研究 ハーバード元学長が教える幸福な社会 デレック・ボック著/土屋直樹、茶野努、宮川修子訳 ~政策転換に向けて幸福の実証研究を促す

評者 高橋伸彰 立命館大学教授

本書は、ハーバード大学の学長を20年間務めた著者が、アメリカを対象にして最近の幸福研究の成果から、政府は何を学び取り、政策に反映するべきかを多様な観点から説いた啓蒙書である。

その中でも、「経済成長の拡大と持続に高い優先度をおいているアメリカ人は賢明かどうか」を問うことは最も刺激的なテーマだと著者は言う。なぜなら、最近の幸福研究は過去60年間にわたる成長が「アメリカ人をより幸福にするのにはほとんど役立たなかった」ことを、「政策立案に際して普通に利用されている多くの統計や資料よりも信頼できる証拠」によって明らかにしているからだ。

もちろん、さまざまな利害対立の調整に苦慮する政府にとっては、パイの拡大を目指す「成長を政策の中心にすえることは政治的に魅力がある」。また、多くのアメリカ人が成長こそ「幸福を高める最も確かな方法」だと考えているかぎり、主要な政策目標から成長を外すこともむずかしい。

しかし、「経済成長が政府の目標として最重要になったのは比較的最近……アメリカでは第二次世界大戦後」のことだと著者は言う。これに対し「幸福を公共政策の目標とする考えは一八世紀から大きく高まった」。

実際、フランスの1793年憲法は「社会の目標は一般の幸福である」と宣言し、アメリカではジェファーソンが独立宣言に幸福の追求を掲げていた。歴史的にみれば幸福の実現こそ優先すべき一貫した目標であり、成長は戦後になってから登場した幸福を高める手段の一つにすぎないのだ。

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