大統領選を左右するアメリカ「労働組合の現在地」 組織率が低下するも、その影響力は侮れない

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社会文化の争点である移民やLGBTQや銃規制などにおいて、共和党の主張に引っ張られる労働者も一定数存在するのです。民主党の政策に違和感や疎外感を持つ組合員はいます。

環境問題で利害が一致した労働組合と環境保護団体

――以前はそれほど労働組合が環境保護団体と結びついていなかったようですが、現在はとても密に感じます。どうしてでしょうか?

松井氏 ひとつは労働組合が左派系の団体と親和性を高めたからです。労働組合の指導者や構成者が白人男性中心だったころは、文化的にもやや保守的だった人が多かったのですが、労働組合員の重心がサービス業に変わっていくなかで、その意識も変わってきました。

また、グローバル化のなか、かつては日本との貿易摩擦が問題でしたが、途上国との貿易の話になっていくと、途上国の環境基準や労働基準の低さが、アメリカの労働者にとって得にはならないと意識されるようになりました。アメリカの環境基準や労働基準にあわない仕事が途上国に流れてしまうからです。

このようなことがあって、途上国の環境基準や労働基準を引き上げたいという環境団体や人権団体の利害と労働組合の利害が一致したのです。

――トランプは環境保護団体が石炭の火力発電に反対していることに対して、もっと石炭を掘れ「ドリルドリルドリル」ということで、石炭産業で働く労働者を味方につけたという報道がありますが、実際のところはどうなのでしょうか?

松井氏 国内の環境問題については、潜在的に労働組合と環境保護団体との対立関係はあります。石炭産業など化石燃料を扱う産業もそうですが、CO₂を排出する産業をなくすことは、そこで働く労働者の仕事を奪うことになります。トランプは、そこをついて、環境保護団体と労働者を離反させようとしています。

それは一定程度、労働者に浸透しましたが、これによって労働組合が分断されたかというと、そんなことはありません。私の知る限り主要な労働組合がトランプの支持に回ったということは聞いていません。

広い目で見れば、トランプが労働者の味方かといえば、違うということを労働組合の指導者は分かっています。それは今までの経緯やトランプ政権のしたことをみれば、明らかなのです。

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