大統領選を左右するアメリカ「労働組合の現在地」 組織率が低下するも、その影響力は侮れない

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労働組合側もグリーンエネルギーやEV自動車の生産で新たな産業を生み出すことができれば、そこで労働者の仕事も増えることにつながるとしています。

現代の労働組合である「ソーシャル・ユニオニズム」

――アメリカの労働組合は、以前の日本の総評系や同盟系みたいに、労働組合の中で左派や右派というのは、あるのでしょうか?

松井氏 アメリカの労働組合は分権的なので、大きく2つのグループに分かれているというよりは、たくさんの組合が散らばっている状況です。そのため、左派や右派で固まっているということはありません。

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ただし、19世紀末から20世紀前半にかけて、アメリカの労働運動でも路線対立はありました。それは、使用者との関係や交渉にフォーカスし、そこでの労働者の利益を追求したビジネス・ユニオニズムと、職場を超えたより幅広い社会的目標の推進まで視野に置いた左派的なソーシャル・ユニオニズムです。

現在の労働組合はビジネス・ユニオニズム的な組合はほとんど見なくなりました。20世紀後半から現在にかけてソーシャル・ユニオニズム路線が労働組合全体としては主流になり、アメリカ政治全体の分極化と並行して労働組合も左派色が強まってきています。全体的にかなり左派的な組合運動が主流になっています。

ただし、左派、右派という感じではないですが、路線対立はあります。頂上単体としてAFL-CIOがありますが、その方針に不満を持つ組合が離脱することもしばしばです。かつてのUAW、チームスターズ、Change to Win(現Strategic Organizing Center)などです。

しかし、労働組合運動全体を大きく二分するような左派と右派のイデオロギー的な路線対立は現時点では見られないように思います。そもそも、共和党があまりにも右過ぎるので、労働組合が共和党の味方になるメリットは全くありません。

松井 孝太 杏林大学准教授

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まつい こうた / Kota Matsui

杏林大学総合政策学部准教授。専門は米国政治経済、社会保障・労働政策、政治学。1986年生まれ。東京大学法学部卒業後、同大学大学院法学政治学研究科修士課程修了、博士課程進学(2019年3月満期退学)。イェール大学フォックス・インターナショナル・フェロー、同大学政治学部客員研究員(VAR)、杏林大学杏林CCRC研究所特任助教、同大学総合政策学部講師を経て現職。共著に『アメリカ政治の地殻変動: 分極化の行方』(東京大学出版会/2021年)、『50州が動かすアメリカ政治』(勁草書房/2021年)、『トランプ政権の分析 : 分極化と政策的収斂との間で 』(日本評論社/2021年)などがある。

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