生成AI導入を「コンサルに丸投げ」する会社の盲点 「なんでもできる」チャットボットの幻想とは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また、生成AIの場合、個別のユースケースに対して、簡単なプロトタイプを作り、クイックに試せるという大きな利点があり、固定的な要件定義をしすぎないほうが、その利点を活かすことができるのです。

では、生成AI導入プロジェクトにおいて、要件定義や計画立案は具体的にどのように実行すればよいのでしょうか。

要件定義においては、大まかな方向性を示す程度にとどめ、詳細な仕様はプロジェクトの進行に合わせて柔軟に固めていくアジャイル型のアプローチがよいでしょう。たとえば、「顧客サービス部門の文書自動生成機能を強化する」という大枠の目標を設定し、具体的な機能やパフォーマンスの指標はプロジェクトが進むにつれて定義していけば、新たに登場する生成AIモデルやツール、そして技術を取り入れやすくなります。

また、計画立案においては、短期的なサイクルを設定して定期的に見直しを行っていきます。1~2週間といった短い期間で具体的な目標を設定し、その達成状況を評価しながら次のステップの計画を立てます。こうすることで、変化する市場環境や技術の進歩に迅速に対応し、プロジェクトの方向性を柔軟に調整することが可能になります。

グラフ
生成AI導入のPDCAサイクル(図表:『ビジネスに魔法をかける 生成AI導入大全』より)

「ベンダー・コンサルに丸投げ」はNG

3つ目は、「過度なベンダーやコンサルへの依存」です。

生成AIの企業への導入は、実際のところまだ始まったばかりで、社内にAI、特に生成AIに関する知見やノウハウがあるという企業はごく稀です。したがって、導入当初にベンダーやコンサルの支援を受けるのは一般的ですし、その支援なしに始めることはむしろ難しいでしょう。しかし、過度にベンダーやコンサルに依存すると、かえってリスクを負うことにもなります。

ビジネスに魔法をかける 生成AI導入大全
『ビジネスに魔法をかける 生成AI導入大全』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

生成AIの導入にあたって、社内のプロジェクトメンバーが十分な知識を持っていない場合、生成AIに関する豊富な知識や経験を持つベンダーやコンサルは、大きな助けとなります。彼らは、他社の導入事例や最新の技術動向に詳しく、プロジェクトの立ち上げや初期の課題解決に役立つアドバイスを提供してくれるでしょう。

ただし、そんな導入初期段階でもプロジェクトの「主導者」は自分たちであることを忘れてはいけません。なぜなら、生成AIの導入・活用の目的は、自社ビジネスの拡大・効率化であり、「自分たちはどうありたいのか」「自分たちはどうなりたいのか」を描くのは自分たちだからです。その姿をベンダーやコンサルにしっかりと伝え、理解してもらったうえで、生成AIという手段を用いて実現する支援をしてもらうというのがあるべき形です。

ベンダーやコンサルはクライアント企業の業務に詳しいわけではないので、ビジネスの実態に対する理解がないまま、汎用的なソリューションを押し付けられてしまう可能性があります。

生成AIは、業務の効率化を目的として活用するため、当然のことながら、自社の業務にフィットするようにカスタマイズする必要があります。そのためには、業務の文脈(フローや内容)に沿った自社の業務知識やノウハウをプロンプトに載せたり、参照情報として提供したりすることで、出力をコントロールすることが重要です。

それを叶えるには、現場の社員が主体となってカスタマイズしていく必要があります。現場の社員こそが業務の詳細を最も理解しており、生成AIをどのように活用すべきかを判断できるからです。そのため、ベンダーやコンサルに丸投げするのではなく、彼らの知見は活用しつつも、内製化を視野に入れ、あくまで自社主導で進めることが成否を大きく左右するのです。

上田 雄登 GenerativeX 取締役CSO  

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うえだ ゆうと / Yuto Ueda

大阪府出身。東京大学工学部卒業後、同大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻(松尾研究室)修了。修士(経営戦略学)。2016年に株式会社YCP Japanへ入社し、経営コンサル業務やAIコンサル業務に従事。2021年より松尾研究所・経営企画部門にて事業改善や中期経営計画等の策定に従事。2023年6月に生成AIを用いたDXソリューションを提供する株式会社GenerativeXを共同創業し取締役CSOに就任。国内大手企業向けの生成AIを用いた業務改革やアプリケーション開発、経営戦略の立案に注力。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事