誰も語らない、子どもの「性的虐待」の現実

「魂の殺人」が放置される日本

――起きてはいけないことが、こんなに高い率で起きているのですね。DV被害者支援に取り組むNPO法人シェルターネットの調査によれば、圧倒的多数の加害者が実の父親(「DV家庭における性暴力被害の実態/性暴力被害に遭った子どもたちのサポートマニュアル」特定非営利法人全国女性シェルターネット)ということで、これもショッキングな事実です。

ところで植田さんは、最初から「性犯罪被害者の取材をして短編映像を作ろう」と思って企画したわけではなかったのですね。

植田そうです。最初はジュンさんの活動を追いかけていたので、期せずして女の子たちが抱えているもの、性被害の深刻さ、それが身体と心をどれほど傷つけているか、知ることになりました。

被害を隠し、追い詰められていく女の子たち

ジャーナリストの植田恵子さん

被害者の女の子たちの話を聞いて驚いたのは、家庭内で性的な被害を受けていても隠したり、学校では元気なフリをしていること。そして私たちのインタビューに「平気」とか「慣れているから」と話すことです。無理をしている反動で暴れて記憶を失くしたり、リストカットをして、腕を切り刻んだりしていました。

彼女たちの話を聞くうちに「自分が子どもの頃、クラスに被害を受けている子がいたかもしれない」と思いました。「私が気づいていなかっただけかも」と。

――周囲の人が被害に気づくのは難しいですか。

植田:たとえば、いわゆる非行や、服を脱ぐことを極端に嫌がることもサインのひとつであると気づきました。自傷、自殺未遂、摂食障害や精神的な不調という形で現れることもあります。

ただ、被害に遭ったことを本人が言うのは、現状ではとても難しいですね……。たとえばショートフィルムの中に、小学6年生のとき、そろばん塾の先生にレイプされた女の子が出てきます。彼女は私が取材で撮影するときまで、本当のことが言えませんでした。

彼女の妹も同じ人から被害に遭っているのですが、レイプではなく、触られた。それを親に言ったら「けがらわしい」と言われてしまった。それを見て「自分はもっとけがらわしいことをされた」と思って、親に言えなくなったそうです。彼女はその後、男性恐怖症になり、男性が近くに来るとパニックになって手首を切って病院に運ばれることもありました。

何も事情を知らない学校や周囲の人に、彼女は「大変な子」と映ったでしょう。でもレイプされていたと知ったら、どうでしょう。レイプは本当に深刻なPTSDをもたらします。法務省の性犯罪の罰則に関する検討会で資料として使われたアメリカの大規模調査(1995年刊行の論文“Posttraumatic Stress Disorder in the National Comorbidity Survey”に詳細あり。15~54歳、5877人を対象に行われた調査)では 、戦争よりレイプのほうがPTSDの発症確率は高いことが実証されています 。

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