大阪名物「りくろー」カット売りは絶対にしない訳 「家族で楽しんでほしい」気持ちがコト消費につながる
そんなりくろーだが、1984年の創業から紆余曲折を経て、店舗数は現在、大阪府下に11店舗となっている。
今後は他エリアへの進出もあるのではと思ったが、「絶対に関西以外では出しません!」と強固に否定された。あくまでも「大阪のチーズケーキ」というブランディングに徹するという。
しかし、これは元々狙ったわけではなく、商品の品質とおいしさを追求していたことから生まれたもの。味をぶらさないよう、本社の目が届く範囲で出店していたら、自然と大阪土産になっていたのだそうだ。
だから東京での催事出店やFC展開も絶対にしない。「大阪から旅行の際に持っていってもらう、または地方在住の方が大阪に来た際に買って帰ってもらうのが理想です」と中村さん。目指すは、『551蓬莱』の豚まんのような存在だ。
重ねて、たとえ大阪府内であっても、店をどんどん増やす予定はないという。基本は、1店舗新店ができたら1店舗閉める。商品の品質とおいしさを保つためには、従業員に負担がかからないことも重要だからだ。同じ理由から、平均的な残業時間や有給消化率、過去9年間の社員定着率もホームページで公表するなど、透明化、ホワイト化に努めている。
育てるのは「単なる職人」ではない
さらに、従業員採用については20年以上前から短大、大学の新卒採用が中心で、75%以上が女性だ。しかも大半は、入社までケーキを作ったことがないという。
その理由を中村さんは、「私たちはただケーキを作れる職人を育てるのではなく、品質の高いケーキを製造し、お客様を楽しませる販売までできる人になることを重視しています。心・技・体が揃っていないと永遠に一人前にはなれません」と話す。
ここで言う心とは、スマホを向けられればプルプル揺らしたり、ガラスケースに張り付くように眺める子供に手を振ったり、オーダーがあれば対応しているバースデーケーキを作って、「~ちゃんできたよ」と声をかけてあげる気持ちのこと。人を楽しませる、すべての物売り、サービス業の原点ともいえる部分だ。
そして技とは、おいしいケーキを焼き上げる技術。体とは、健やかであること。そのすべてが、40年間行列の店を支えてきたのだろう。「待っている時間に笑顔のお客さんを見るのが、お菓子屋冥利に尽きる瞬間です」と、中村さんは少し照れながら語った。
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