大阪名物「りくろー」カット売りは絶対にしない訳 「家族で楽しんでほしい」気持ちがコト消費につながる
ただし、微調整は行われた。昔は「ラムレーズン」だったところを、子供も食べることを考え、お酒を使うことはやめたそうだ。さらに、「あり派」から、「自分が食べた場所にレーズンが入っていなかった」というクレームを受け、レーズンをケーキの円周に沿ってぐるりと並べる形にした。これなら放射線状に切り分けたとき、レーズンが当たらない人が生まれない。
そしてこれは、「なし派」への朗報にもなった。円周ということは、中央部にはレーズンがないからだ。そこでりくろーは、チーズケーキの包装箱に「新発想!りくろーカット」として、レーズン抜きカット術のイラストを記載した。
筆者は、筋金入りの「なし派」で、毎回レーズンを取り除いている。
だが今回、リクロー株式会社で企画部本部長を務める中村真士さんから、レーズンの製造工程を聞いて少し揺らいだ。あのレーズンは、蒸してからひとつひとつ小枝を取り除き、自家製シロップに漬けて炊き上げるという手間暇がかかっているそうだ。この蒸す工程で、ふわふわやわらかい触感となるという。
取材後そう思って食べると、レーズンも悪くないと感じた。読んでいる「なし派」のみなさんも、ぜひ食べてみてほしい。
行列さえも楽しむ、エンターテインメント型店舗戦略
りくろーの一番のファンは家族連れだ。親子はもとより、祖父母と孫での来店も多い。40年もの人気の継続は、いち早く、彼らが楽しめる「コト消費」の意識で店作りをしていることにも要因がある。
例えば、パティスリーの厨房と言えば奥まって見えなかった昭和の時代から、キッチンをすべてオープンにしている。行列に並びながら見て楽しめるように、という想いからだ。
5~10分間隔でチーズケーキが焼き上がると、なんとも言えない甘い香りが漂うのはもちろん、鐘を鳴らし、「チーズケーキが焼き上がりました」と声をかけて知らせてくれる。
さらに店内には、「グリーター」と呼ばれる案内担当係がいて、行列を整理しながら、質問や疑問にも答えてくれる。
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