「富山の祭り」資金対策"80万円の観覧席"の満足度 20万人が見物、300年の歴史ある「おわら風の盆」

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「三味線のトップクラスの連中が弾いているものは、1棹200万~300万円はする。また、どこかのご子息が新しい三味線を買うという話になったときには、親御さんが追銭してでも、いいものを持たせようという気風が、この町にはある」(橘さん)

このような「本物を残そう、伝えよう」という住民の気概に支えられて継承されてきたおわら風の盆だが、少子化に加え、コロナ禍においては2年間の中止を余儀なくされ、継承の危機に立たされたという。

特別ステージで行われた踊り方のレクチャー
八尾曳山展示館で実施の特別ステージでは、踊り方のレクチャーも行われた(筆者撮影)

「八尾では、踊り手は年代によって衣装が変わるが、子どもたちなりに、次は中学生の衣装を着るからということで一生懸命に練習に励む。とくに高校生から成年になると、衣装もまったく変わるので、大人の踊りを目指す。不思議なことに、年にたった3日間だが、おわら風の盆の本番を経験することで踊りのレベルが一気に上がる。それが2年間できなかったのは大きく、私見だが、八尾のおわらのレベルが下がったと感じた」(橘さん)

これはまずいということで、練習場所となる公民館などに、広さに合わせて空気清浄機や衝立などを分配して練習を再開し、規模を縮小しながらも、なんとか再開にこぎつけたのが、一昨年(2022年)だった。

応援を力に祭り継続

橘さんは、「ありがたいことに八尾に移住してくる人たちは、おわらに魅了された人が多く、祭りに対して非常に協力的だ」というが、全体として見れば少子高齢化の流れには抗いがたく、とくに小さな町内では、祭りの担い手不足が課題になっている。

そこで、こうした人手不足・資金不足への対策として、今年から新たに始めたのが「祭り×推し活」の取り組みだ。具体的には、11町それぞれの町紋がデザインされた「応援うちわ」やオリジナル手ぬぐいを祭り会場や越中八尾観光協会のオンラインショップで販売。お客さんに自分が応援したい町のうちわを買ってもらい、踊りを見に行ってもらおうというのである。その収益は必要経費を除いて、翌年以降の祭りの運営に役立てられる。

グッズ販売会場で並ぶ人たち
グッズ販売会場前には行列ができていた(筆者撮影)

この「推し活」の取り組みには次のような効果が期待され、実際に反響も大きいという。

「今回の取り組みは、ふるさと納税と同じように、祭り会場に来なくても応援できる仕組みであり画期的。しかも、一度、商品を開発して販売チャネルさえ構築すれば、運営側にそれほどのリソースが必要とされず、持続性も高い」(富山県の県政エグゼクティブアドバイザーを務める立教大学客員教授の永谷亜矢子さん)

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