「富山の祭り」資金対策"80万円の観覧席"の満足度 20万人が見物、300年の歴史ある「おわら風の盆」

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では、同じように高額な料金を支払う今回の町家貸し切りプランとはどのようなものなのか。まず建物を見ると、八尾の中心部の通りに面した木造2階建ての古民家である。持ち主は県外在住のNさんで、「この町家に惚れ込んで購入」したといい、内装は、どちらかというとインバウンド好みの和風に改装されている。

町家2階の室内
「町屋貸切 特別観覧席プラン」で使用された町家2階(筆者撮影)

有料観覧席の満足度

この建物は魅力的ではあるものの、建物自体に80万円を支払う価値は見出せない。つまり、80万円という値段は、祭りのプレミアム観覧席としての価値に付けられているのだ。最近では、大阪の「水都くらわんか花火大会」(9月15日開催)で、1組限定300万円(税込)の有料観覧席(最大10名で利用可)が販売され、話題になった(実行委員会に問い合わせたところ、旅行会社が購入したという)。この点、おわら風の盆は、踊りを見るための場所の確保が大変なので、観覧席のニーズはあるのかもしれない。ちなみに、今年は1組の利用があったという。

では、実際に町家からは、どのように祭りが見えるのだろうか。9月1日は予約が入っていないとのことだったので、Nさんの許可を得て、20時30分頃から1時間弱、2階に滞在させてもらった。筆者が滞在した時間帯は、残念ながら少し離れた場所で踊る人たちの姿がわずかに見えるだけだったが、町家の前で踊る時間帯であれば、特等席になるだろう。

だが、元々、台風シーズンに風神鎮魂を願うのが「風の盆」なのであり、9月初旬のこの時期は雨に降られやすい。前述したように高額な衣装、楽器等を使用していることから、雨が降れば休止し、降り止めばまた継続するというようなケースも多々ある。したがって、有料観覧席から満足度の高い祭りの観賞ができるかは、運次第ということになりそうである。

こうした取り組みは、気象条件など観賞満足度に応じた返金システムなども十分に考慮しておかないと、トラブルの原因になりかねない。

森川 天喜 旅行・鉄道ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)。2023年10月~神奈川新聞ウェブ版にて「かながわ鉄道廃線紀行」連載開始

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