JR九州上場と新国立競技場問題を考える 国民の税金を勝手に使わせてはならない

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そういったことを考えますと、最も正しいやり方は、基金を「資本金」に振り替えるか、あるいは「永久劣後債」にするというのではないかと思います。

資本組み入れ可能で金利も払う劣後債がいい

少し専門的になりますが、永久劣後債とは、社債の一種で、会社が倒産した時に、債務の支払い順位がほかの債務より低い債券のことです。借り入れと同じですが永久に返済をしないので、資本の一部に組み入れることができます。

そして、これに0.5%でも1%でも金利をつければ、国民の資産をなし崩し的にJR九州に譲渡されることなく、金利で国民に還元することもできます。これまで国民から無利息で預かっているおカネの運用益で事業を成り立たせてきたのですから、上場後は、幾分かでも国民に還元することを考えるべきではないでしょうか。

なぜ、JR九州が上場に際し基金をもらってしまうことになったかの詳細は不明ですが、私が想像するには、ひとつは、国会議員がバランスシートという概念を十分に理解していないからではないかと私は考えています。国の予算は単年度予算で、フローでしか考えていませんから、元来、政府が預けているおカネ(つまり国民の資産)であっても、一度、JR三島会社に交付されてしまったら、「あげた」と同じという意識を持っているのです。資産(ストック)という概念がないのです。

この基金の取り扱いに際し、国土交通省が中心となりとりまとめた「JR九州完全民営化プロジェクトチームとりまとめ」によれば、「経営安定基金取扱い」として「完全民営化した後においても取り崩し禁止や運用に係る規制が付された資産、すなわち会社や株主が自由に処分することができない資産を持ち続けることになり、経営の自立性が損なわれる」としています。私もこの意見にはまったく賛成です。裁量権を持って使えたほうがいいでしょう。

しかしこのことは、基金をJR九州が「もらう」ということを必ずしも正当化するものではありません。というのは、これは、貸借対照表の「資産」について述べていることであって、資金調達源である「純資産」に属する基金を自分のものとしていいという理由づけにはもちろんならないのです。

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