JR九州上場と新国立競技場問題を考える 国民の税金を勝手に使わせてはならない

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私は、国鉄分割に際して基金を「JR三島会社」に交付したこと自体は悪いことではないと思います。鉄道は地域の人にとって必要なインフラですから、潰すわけにはいきませんし、赤字を出し続けるわけにもいきません。そのために基金を交付し、その「運用益」を鉄道事業の赤字の補塡に使うというものです。

上場する際に基金をもらうとは、言語道断

この際に注意しないといけないのは、繰り返しになりますが、基金はあくまでもJR九州などに「預けて」あるもので、それを運用した「運用益」を与えているということなのです。これは、株主が会社に入れた資本金などのおカネを会社に与えているのではなく、あくまでも預けているだけで、それを使って利益を生んでもらおうというのと同じ発想です。

そうした意味で、JR九州が上場に際して、基金を国庫に返さず、あるいは政府からの借り入れや政府にその分の株券を発行するのではなく、「もらってしまう」という点に私は疑問を感じているのです。基金はもともと、国民の税金です。上場するから預かっていた税金を原資とする基金をもらってしまうというのは、とてもおかしな話だと思うのです。

先ほども述べましたが、国民から預かっているおカネは、いわば、株主から預かっている株式と同じです。ですから「純資産」に計上されているのです。意味合い的には貸借対照表の「純資産の部」のうち、「資本金」と「資本剰余金」等と同様に考えられるおカネなのです(利益の蓄積である「利益剰余金」も一義的には株主のものです。念のため)。しかも、基金は交付された際に、「純資産」の部に「経営安定基金」として別科目で計上され、損益計算書上も、「経営安定基金運用収益」として、こちらも別勘定で計上されています。基金が与えられたものであるなら、与えられた時点で純資産に別項目で計上される必要はありません。あくまでも「預けている」という趣旨だからです。

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