JR九州上場と新国立競技場問題を考える 国民の税金を勝手に使わせてはならない

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このような理解しがたい話は、国内で無数に起こっているのではないかと心配しています。最近話題になった新国立競技場問題も同様です。新国立競技場の問題は「目立つ」話だったので国民の注目を集めましたが、目立たない問題でも数多くの問題があるのではないでしょうか。国民から広く浅く集めたおカネを、既得権益にばらまいたり、既得権益が不当に得をしているようなことが多く起こっているのだと思います。

今回は、JR九州の平成27年3月期決算(2014年4月〜2015年3月)を分析しながら、上場について私の意見を述べたいと思います。

JR九州の鉄道事業は赤字、全体の営業利益率も低い

JR九州の損益計算書(14ページ参照)から見ていきましょう。グループ全体の連結で見ると2015年3月期の売上高にあたる営業収益は、鉄道事業を中心とする運輸サービスが1745億円、建設や駅ビル不動産などの関連事業を含めた、合計で3574億円となっており、営業利益は127億円です。ただし、運輸事業は132億円の営業赤字となっています。一方、駅ビル不動産事業が184億円の利益を稼いでいます。駅ビルなどの不動産事業など、ほかの事業で何とか黒字を確保している様子がわかりますね。

もう少し詳しく見るために、鉄道事業主体の単体決算(18ページ参照)を見ると、運輸サービスの中の鉄道事業の営業収益(売上高)は1632億円ですが、営業費が1773億円で事業収益を上回っています。140億円の営業損失を計上していることがわかります。

JR九州は、人口減少や少子高齢化の加速によって、鉄道事業は縮小していくと見ており、今後は全事業の売上高のうち鉄道事業に占める割合を40%以下に落とそうとしています。

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