九州旅客鉄道(以下、JR九州)が、完全民営化に向けて動いています。ここで焦点となるのは、国から預かっている「経営安定基金」3877億円の扱いです。報道によると、基金は国に返済せず、九州新幹線の使用料や借入金の支払いに充てられる予定とのことです。
私は、JR九州が上場すること自体は問題ないと思います。ただ、上場するのであれば、基金は国庫に返すべきではないでしょうか。あるいは少なくとも国への債務とするべきで、それをもらってしまうというのには、とても違和感があります。
今回は、JR九州の平成26年3月期決算(2013年4月〜2014年3月)を分析しながら、上場に向けての基金の取り扱いについて私の意見を述べたいと思います。
不動産業と基金の運用益でようやく黒字に
JR九州が2016年度までに上場しようとしているとのことですが、今の収益状況はどのようになっているのでしょうか。損益計算書(10ページ)から見ていきましょう。
売上高にあたる営業収益は3548億円、営業利益は90億円となっています。売上高営業利益率は2.5%と低い水準ではありますが、90億円の利益は出ていますから、まずまず堅調だと言えます。
続いて、収益の内訳を見てみましょう。事業ごとにまとめたセグメント情報(同14ページ)によると、「外部顧客に対する売上高」のうち最も大きなウェイトを占めているのが「運輸サービス」の1706億円ですが、この事業の営業利益はマイナス149億円と、大きな赤字を計上しているのです。
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