JR九州は、このままでは上場できない 3877億円の「税金」を懐に入れていいのか

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この「新幹線使用料」とは、運送する事業者が、線路や駅舎を所有する事業者に対して支払う使用料です。

JR九州の場合は、九州新幹線の施設を所有する「鉄道・運輸機構」に、毎年102億円の使用料を払っています。これを、基金を使って一括で20年分くらい前払いしようとしているのです。

「新幹線使用料」に「経営安定基金」を充てるな

基金を取り崩せば、運用益が出なくなります。その分を、新幹線使用料を前払いしてしまうことで、利益をかさ上げしようという話です。

使用料を前払いすること自体は、事業上、問題ないことだと思います。ただ、それをやるのであれば、基金を充てるのは筋が違うと私は思うのです。

基金を使うためには、JR会社法を改正しなければなりません。JR会社法とは、JR3島やJR貨物が事業を行う上での規制をまとめた法律で、経営安定基金の取り扱いについても定められています。その12条で基金の取り崩しは禁止されています。

基金の扱いについてJR会社法を改正する際に、「元々、基金は国民のおカネである」ということを国会できちんと議論されるのかどうか、私は非常に懸念しています。先ほども申し上げた通り、政府にはバランスシート的な感覚がありません。ただ単純に「JR九州に基金を与えて上場すれば、上場益が増えるだろう」と考えてしまう可能性が高いのではないでしょうか。

ただし、繰り返しますが、基金は元々、政府の財産、ひいては国民の財産なのです。これをJR九州に与えてしまえば、確かに上場益は上がるでしょう。JR九州の株式は政府が持っているわけですから、上場益が上がれば、その分、政府に還元されます。

つまり、バランスシートという点から考えると、国民の財産をJR九州にあげてしまうことで、損益をかさ上げされ、それによって上場益が出るというわけです。これはこれまでの経緯からしておかしいのではないでしょうか。それなら元々のおカネを返してもらえばよいわけです。

また、「元々は交付されたおカネなんだから、そのままもらっても問題ないのではないか」という見方もあるでしょう。しかし、基金は元々国民のおカネだったわけですから、JR九州の経理上も別勘定で管理し、なおかつ取り崩しを禁止されていました。

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